シュンツ場におけるツモ牌相理論については、「3/4それから…」の中でわずか3局ですが描かれています。はたしてシュンツ場におけるツモ牌相理論とは、どういったものなのでしょうか。
トイツ場を崩され、トイツの重なりを手牌に活かせなくなり、苦境にたたされる堀場。ダントツだったのが、狙い撃ちされ逆転されかかっている。このギリギリで踏ん張れるか…
とびツモ牌相
東1局・東2局と松橋が連続でツモ和了。ここでまた松橋が大物手を決めると、優勝が決まってしまう…
東3局 ドラ
ツモ
捨て
ツモ
捨て
ツモ
捨て
ツモ
捨て
ツモ
捨て
ツモ
捨て

なに⁉ 受けのリャンメンを捨てて、カンチャンを残した…‼
ツモ
捨て
リーチ
ツモ

なぜが読める⁉
もしやこれもツモ牌相なのでは…⁉

スジを集めてアンコにするだけがツモ牌相じゃねぇのさ
シュンツ作りこそツモ牌相の白眉なんだ
この局 堀場のツモは
ソーズは奇数 ピンズは偶数のツモだったわけである
堀場は6巡目のをツモった時点で、次は
か
を引く確信を持っていた
だから自信をもってカンのリーチをかけたのである
のように、間が1つ抜けて重なるツモ牌相を「とびトイツ」と呼ぶが、今の堀場のツモは「とびツモ」といえるだろう
と、説明があるわけですが、「なるほどなぁ」となるでしょうか。まぁ、これはそういうものと思ってください。でないと話が先に進みません。そのうえで、なぜ堀場がを切ったのかという話です。
さて、問題の切りシーンです。
ピンズもソウズも「リャンメンカンチャン」の形になっています。受け入れは「」です。そのうちどの受けを消しても良いかという問題です。
ソーズは奇数でピンズは偶数のツモですから、上記の受け入れのうち「」は消せますね。またシュンツ場ですから、牌が重なる「
」も消せます。つまり上記の理屈から、堀場は今後「
」のツモを予想していることになり、この受け入れで必要なのは
と
だけになるのです。
であれば、切りで「
–
」受けを捨て、
受けだけを残す選択もあり得ます。なぜ堀場は、
受けのあるリャンメン受けを捨てる
切りになったのでしょうか。実はその理由は、他家の捨て牌にあるのです。
この時の他家の捨て牌はこうなっています。
東家 松橋
南家 滝
西家 布施
親の松橋が内側からのカンチャンターツ外しがあり、手が早そうです。布施はソウズに染めてそうです。それを踏まえて考えると、「–
」「
–
」が将来的に危険になりそうです。
それに対しては、松橋に対してはスジになっています。滝に対しては現物です。布施はソウズに染めていますから、ピンズは安全です。ということで全員に対して安全な
を残して、将来危険牌になりそうな
を先に切ったのではないでしょうか。
堀場はなかなか繊細な打ち手ですね。
一色ツモ牌相
流れは松橋に向いたかと思ったが、前局の堀場の和了で、またわからなくなった…
東4局 ドラ
ツモ
捨て
ツモ
捨て
リーチ

な…なんだ⁉
メンタンピン1の手を
わざわざリーチのみに……!
堀場のリーチ宣言牌のをポンして、「
–
」待ちの聴牌に取る松橋。好形聴牌にとれた松橋の方が有利に見えた。しかし結果は、堀場のツモを喰いとった形でツモってきた
で、松橋から堀場への放銃となる。

ポンがなければ、このは堀場の一発ツモだった…

次のツモを完全に読み切っているのか…
配牌からのツモ牌相を理解して、俺は堀場のすべてをわかったつもりになっていた。しかし、それはほんの一部に過ぎなかったんだ…
この局、堀場の思考はどういうものだったのでしょうか。それを考えてみましょう。この局の堀場の捨て牌はこうなっています。
となっています。つまり堀場のツモは
と来たわけです。マンズの奇数ツモですね。ならば前章にあったとおり、
か
を引く確信を持ったリーチだったのでしょうか。
とはいえ、堀場はツモの時点で両面ターツ外しを開始しています。
と
のツモを見ただけで、マンズの奇数ツモを予測できるのでしょうか。むしろ
と来ているので、「1・9字牌ツモの流れ」が考えられそうです。
あるいは不明な最初のツモが実はだったなら、
で奇数のツモと考えるのは分かります。ですが、それだと
ツモ
ここからをツモ切りすることになります。何も情報がないなら、さすがに
のカンチャンを外すでしょう。いやもしかすると配牌は
こうなっていて、そこからツモなら、そのままツモ切りするのは考えられます。ですがそうすると次のツモが
で、
切りになるはずです。すると堀場のツモは
となり、奇数ツモとは言い切れません。
ですが、これはこれでマンズツモ、「一色ツモ」の流れと考えて、のリャンメンを払ったのは分かります。つまり不明の最初のツモは
もしくは
で、堀場はマンズに寄せていったのではないかというのが、私の考察です。
(でもかすかに見えるところからは、不明の牌はっぽいんだよなぁ…うーん…)
手役に沿うツモ牌相
シュンツ場のツモ牌相を解こうと試みる滝。しかしその一端もつかめない。堀場のツモ牌相はトイツ手、シュンツ手すべてに通用するものだった。あまりの堀場の強さに、ギャラリーの誰もが堀場の優勝を疑っていなかった
しかし、堀場楽勝かとおもわれたオーラス…全員に逆転の目が…
南4局 ドラ
ツモ
捨て
ツモ
捨て
ツモ
捨て
ツモ
捨て
ツモ
捨て
ツモ
捨て

ウソだろ⁉
なぜ絶好の3メンチャンを取らない⁉
ツモ
捨て

そうか三色にするために、危険なを浮かせ打ちしたのか
だがなぜアガりさえすればいい局面で、三色に固執するんだ?
ツモ

そうか堀場さん、今のあんたの手牌は三色のツモ牌相だったんだ
ツモ牌相は手役に沿うこともあるんだね
とまぁ、戸川さん大絶賛ですが、この牌譜をもう少し深堀してみましょう。
問題の切りシーンです。
当然を切れば「
–
–
」待ちになります。ツモ牌相が手役に沿うなら、ピンフという手役に沿ってもいいのではないかと思われます。
ですが、これまでの堀場のソウズのツモはです。そこからソウズは偶数のツモだと、堀場が考えたのなら、「
–
–
」はツモれないと判断に至ったのでしょう。
あらためて堀場のツモ牌を確認しましょう。
こうなれば、「456」の三色になりそうだと思いますよね。まぁ「456」とは言わずとも、中張牌の流れなのは間違いありません。
ならば、を切って
このように、タンヤオのと
のシャンポン待ちに取ることができます。「
–
–
」はツモれないと判断したとしても、なぜこのシャンポン待ちの聴牌を、取らなかったのでしょうか。「456」の三色を狙うにしても、とりあえずこの聴牌にとっておいて、そこからの変化を待てばよいのではないかと思われます。
ただよく考えれば、この場は松橋によって「トイツ場」を壊された後にできた「シュンツ場」です。ならばシャンポンの牌をツモることなんかあり得ません。それを期待すること自体無意味なのです。
そこで戸川が言うように三色にするために、危険なを浮かせ打ちしたのです。実際に他家の捨て牌はこうなっています。
東家 滝
南家 布施
北家 松橋
滝はドラのを手から暗刻落とししたうえで、マンズの両面ターツ外しです。これはよくわかりませんが、ピンズの清一色も考えられます(実際は国士無双)。布施についてはピンズの情報がありませんが、
トイツ落としや、
のカンチャンターツ外しがあり、かなり良い手牌と考えられます。松橋はマンズの両面ターツ外しをしています。「数牌→字牌」ですし、ピンズの一色手でしょう。
滝と布施とは点差がかなり離れているので、聴牌すればリーチがかかると思われます。なのでまた聴牌はしていないだろう。しかし特に布施は、捨て牌から考えて次にもリーチが来そうです。松橋からは生牌の字牌が余り出したので、かなり危険です。ピンズが余っていないので、まだギリギリイーシャンテンだと判断してもいいでしょうか。
自分のツモの流れから「–
–
」はツモれない。最初の
以外は、重ならないように中張牌をツモってくる、いわゆる「シュンツ場」になっている。そして「456」の三色になりそうだ。さらにピンズが高い。堀場が
を切ったのは、そういう状況だったのです。
事実、次巡に布施からリーチで、待ちは「–
」でした。シャンポンに構えて、「456」の三色に変化させていたら、布施への打ち込みで逆転となっていました。
さらに松橋からの同巡リーチがかかり、待ちは「」待ちでした。その次巡に堀場が
ツモって和了ったのですから、堀場が「456」にとっていなければ、
で打ち込みか、あるいは降ろされて、松橋がツモって逆転だったでしょう。
まとめ
ということで、シュンツ場におけるツモ牌相について、「3/4それから…」から考察してみました。ポイントは3つです。
「とびツモ」と言うべき、偶数、あるいは奇数のツモ。「一色ツモ」と言うべき、同じ牌種のツモ。最後は「手役に沿うツモ牌相」です。これらがシュンツ場におけるツモ牌相として、あるのかないのか、信じるか信じないかはあなた次第です。
あと今作「3/4それから…」の闘牌原作が「福地誠氏」と「村田光陽プロ」でした。前作の「3/4」よりも、今作の方が明らかに闘牌の精度が上がっているように感じます。素晴らしい。
誤植について
堀場の聴牌外し場面、コミックの牌姿がこうなっていました。
おそらく→
の誤植でしょうから、上記ではそれを修正して話をすすめています。あとは戸川が松橋の手牌について「しかも
は松橋がアンコってるんだぞ」とコミックで言っていますが、実際はアンコの牌は
と
です。ここも誤植ですね。
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