得点から考える七対子(チートイツ)とリーチ
今回からは七対子において、得点からリーチするかどうかを考えてみましょう。
七対子(チートイツ)はニコニコ(2個2個)とも呼ばれるように牌を2個ずつ集めてできる役です。ですので得点においても「2」という数字は七対子(チートイツ)と強い関わりがあります(?)。以前にも書いたことですが、七対子(チートイツ)の点数と翻数はこのようになります。
2翻 1600 / 3翻 3200 / 4翻 6400 / 5翻 8000 / 6翻 12000 / 7翻 12000 / 8翻 16000
そしてそれぞれの点差で考えると
2翻→3翻(+1600) 4翻→5翻(+1600) 6翻→7翻(+0) はあまりうれしくない。
3翻→4翻(+3200) 5翻→6翻(+4000) 7翻→8翻(+4000) は結構うれしい。
つまりベースの2翻から考えると「+2翻」の4翻。さらに「+2翻」の6翻。さらに「+2翻」の8翻が得点効率としてちょうどよいのです。
ではこの「+2翻」をどうやって手に入れたらよいのでしょうか? 単純明快なのはドラです。手の内にドラがあることは、すなわち2枚あることですから「+2翻」となります。
またリーチも「+2翻」を得る一般的な方法です。リーチ自体は1翻ですが、それは聴牌を他家に教える行為になりますので出和了りの可能性が低くなり、相対的にツモ和了りが多くなります。すなわち「リーチ+ツモ」のセットで「+2翻」となるわけです。
さらにリーチには裏ドラの可能性があります。七対子(チートイツ)の場合、裏ドラがのるときには当然2個です。なのでこれも「+2翻」になります。いわゆる七対子(チートイツ)黄金公式「リーヅモチートイドラドラウラウラ」です。
さてこの「リーヅモチートイドラドラウラウラ」おけるポイントがどこにあるのかは明白でしょう。そうです。「リーチにツモがセットとなる」の部分です。もちろん七対子(チートイツ)においてリーチは、必ずしもツモとセットではありません。
なぜなら七対子(チートイツ)のリーチは常に単騎待ちとなっているため、待ち牌は最大でも3枚しかありません。リーチをためらってしまう人も多い、カンチャン待ちやペンチャン待ちですら最大は4枚あります。そんな心もとない単騎待ちで、本当にリーチとツモがセットになるのでしょうか。
つまり何が言いたいかというと、七対子(チートイツ)でリーチを打つなら、そこに「ツモ」を組み合わせることが望ましいのは大前提です。ですが、リーチにツモを組み合わせるにはどうするべきかを考えることが、七対子(チートイツ)におけるリーチの役割を解き明かすことになり、どのようなときにリーチをすべきかを考える糸口になるのではないかということです。
次章はツモ率を高める2つの要素について、あれこれ書いてみようと思います。
「リーヅモ」の要素Ⅰ 和了り牌の数が多い
七対子(チートイツ)の得点効率にとって、「リーヅモ」がポイントになります。ではどうすれば七対子(チートイツ)のリーチに、ツモを組み合わせることができるのでしょうか?
もしあなたがガン牌の達人なら、自分の和了り牌がどこにあるのか分かります。そうなら次巡にツモれるとなった時点でリーチをかけますよね。それは「一発」をつけたい以上に、他家の動きを警戒してです。リーチした後に和了り牌の「ツモ」まで時間がかかればかかるほど、不確定要素が増えるからです。
かの名著「アカギ」にも「リーチは天才を凡夫に変える」とあります。ということで、なるだけツモれると確信を持ったときが、リーチをするタイミングの1つといえるでしょう。
ではツモれるな、と思えるのはどういうときなのでしょうか? そこには2つの要素があります。
1つ目は牌山に残っている自分の和了り牌の数が多いことです。当然残っている和了り牌の数が多ければ多いほど、次巡に和了り牌をツモる確率は高くなります。七対子(チートイツ)の場合その最大は3枚で、2枚・1枚となるにつれ低くなり、0枚になるとツモる確率は0となります。
その辺を分かりやすく(?)するために「くじ」を例に挙げてやってみます。
ある箱の中に40枚のくじがあって、自分を含めて4人が当たりくじを求めて引くのです。まずそれぞれが1回ずつ引き、誰も当たりくじを引かなければ2回目の抽選をします。そして誰かが当たるまでそれを繰り返し、当たった時点でゲーム終了というものです。
麻雀で言えば、たとえば微差のオーラスといった状況があります。そのような状況では他家がリーチに対して危険牌を引いてもどんどん勝負にくるでしょう。この「くじ」の例はそういった状況で、どれだけツモ和了りができるのかというシミュレーションでもあるのです。
40枚中当たりは1枚で考えて見ますと、1回目の抽選で自分が当たる確率は2.5%です。自分も含め4人全員が外れる確率は(39×38×37×36)÷(40×39×38×37)=90% 2回目の抽選で自分が当たる確率は90%×(1÷36)=2.5%です。自分を含めて4人全員が外れる・・・(以下省略・・・)
では40枚中当たりが4枚だとどうなるでしょう? 1回目の抽選で自分が当たる確率は10%です。自分も含め4人全員が外れる確率は(36×35×34×33)÷(40×39×38×37)≒64.5% 2回目の抽選で自分が当たる確率は64.5%×(4÷36)≒7.2%です。自分を含めて4人全員が外れる・・(以下省略・・・)
さらに40枚中当たりが8枚だとどうなるでしょう? 1回目の抽選で自分が当たる確率は20%です。自分も含め4人全員が外れる確率は(32×31×30×29)÷(40×39×38×37)≒39.3% 2回目の抽選で自分が当たる確率は39.3%×(8÷36)≒8.7%です。自分を含めて4人全員が外れる・・・・(以下省略・・・)
と、数式をずらずら並べても分かりづらいと思いますので、それをグラフにしたものを見てみましょう。
和了り牌の枚数が多ければ多いほど序巡におけるツモ率の減少幅が大きくなっていることが分かります。逆に枚数が少なければ少ないほど序順におけるツモ率の減少幅が小さくなり、なんと1枚ならばツモ率は一定なのです。
もちろん他家がストレートに攻めてくるとしても、自分の和了り牌が他家の必要牌であることもあります。和了り牌の枚数が多ければ多いほど、その可能性は高まります。実際には「8枚ツモ率」のグラフは、始点と終点は同じですが、その傾きはもっとゆるやかになるでしょう(たるんだ糸を少し張った感じ?)。「4枚ツモ率」のグラフもまた同様です。ただ、このグラフたちが持つその傾向は、変わりません。
そこで本題の、「リーチとツモを複合させるにはどうすればよいか」です。和了り牌の枚数が多い多面待ちなどは、聴牌したらすぐにリーチするのが良いです。なぜならグラフに示されているとおり、次巡にツモる可能性が最も高く、もたもたしているとリーチをする前にツモってしまうからです。
「お前、リーチ一発ツモが多いなぁ」とか「あーあ、リーチをしていれば一発ツモだったなぁ」とか、ついつい口に出してしまいがちです。しかしそれは当たり前で、多面張などでは聴牌後3巡目ツモより、1巡目ツモの方が多いのです。
和了り牌の枚数が多ければ多いほど即リーチすべきということは、逆に和了り牌の枚数が少ないなら、多面待ちほどあわててリーチをする必要はないとも言えます。
七対子(チートイツ)の場合は常に単騎待ちです。相対的に他の待ちより、和了り牌の枚数は少なくなります。するとなんでもかんでも即リーチではなく、より良い待ち牌への変化を待つ余裕を持ってもよさそうです。
とはいえ試行回数が多ければ多いほど、ツモの確率が高まります。聴牌したらすぐにリーチをして「リーチ後ツモ」の回数を増やすというのも、リーチとツモを複合させるという意味では理にかなっています。
ただ問題は七対子(チートイツ)の防御力です。和了り牌の種類が多ければ、他家からストレートに攻められた場合、その攻めを比較的咎め易いです。そして仮に追いつかれた場合でも五分以上の戦いができます。
しかし、七対子(チートイツ)の場合は、和了り牌が1種類しかありません。他家からストレートに攻められた場合にもそれを咎め難く、反撃されてしまうと分が悪くなります。しかもその防御力の差は、残り巡目の多さに比例して広がっていくことになります。
つまり「リーチは天才を凡夫に変える」を地で行くことになり、リーチしたからといって十分な試行回数が得られる保証は決してありません。また、自らの危険度を上げることにもなりかねません。ということで七対子(チートイツ)の場合、「なんでもかんでも即リーチが、リーチとツモを複合させるためのベストな選択だとはいえない」と考えられるのです。
では七対子(チートイツ)はリーチしないのか、というとそんなことはありません。前回に述べたように「リーヅモ」があることにより、得点効率がよい和了りが見込めます。なので、積極的にリーチをしていきたいです。ただチートイツには、自信のある待ち牌に変化するまで待つ余裕が、多少あるということです。
七対子(チートイツ)のリーチ判断は、難しいです。その辺をツモ率を高める要素2つの内、もう1つの要素を使って、次回さらに考察を続けていきましょう。
「リーヅモ」の要素Ⅱ 残り牌山が少ない
七対子(チートイツ)の得点効率にとって、「リーヅモ」がポイントになります。それを目的としたリーチのタイミングの1つ、つまり「早い段階でツモれそうだ」と思えるには2つの要素があります。1つ目の要素は前回述べたとおりですので、今回は2つ目の要素からリーチのタイミングを考えてみましょう。
2つ目の要素は牌山の残り数が少ないことです。 これも「くじ」を想像すれば分かりやすいかと思います。4枚中1枚が当たりのくじで、当たりを引く確率は25%です。10枚中1枚が当たりのくじで、当たりを引く確率は10%です。つまり残り牌山の枚数が少なければ少ないほど、1巡あたりのツモ確率が上がるのです。
ただこの場合の気持ちとしては、「早い段階でツモれそうだ」というより、残りツモ巡も少ないから単に「ツモれそうだ」になるのでしょうか。あるいはずっと以前より聴牌しているのなら、「いい加減にツモるだろう」となるかもしれません。
それに加えて、前回で述べたとおり「リーチ」と「ツモ」の間隔が大きくなると、七対子(チートイツ)にとって防御力の面から望ましくありません。そう考えると、残り1巡を残してリーチするのがよいということなるのでしょうか。
いや、簡単にそうとも言えません。防御を本当に重視するなら最後のツモでの振り込みの可能性も考慮して、最後の最後までダマを貫くべきです。ツモを1回残してのリーチは防御重視と言いながら得点への未練を断ち切れないという、少しめめしい打ち方です。
そう考えると「残り1巡を残してリーチ」では「得点」の部分が少なすぎ、「防御」の部分が多すぎる感じがします。そこでリーチのタイミングをもう1巡前にして、残りツモが2回の段階であれば、どうでしょうか? もちろんそれによって、他家からの攻撃の可能性と、そこへの振込みの可能性が広がります。しかし「リーチ」と「ツモ」複合の可能性も広がります。
さらにリーチのタイミングをもう1巡前にして、残りツモが3回の段階であれば…とかなんとか考えていくと、結局どのタイミングでリーチをするのがよいんだ? となってしまいます。本来は点数状況とか河の様子はもちろん、他家の性格などその他もろもろを考えて判断するのがベストなのでしょうけれどねぇ。
よくよく考えれば七対子(チートイツ)のリーチは、「○巡目にリーチ」なんて確定できるわけもありません。今回に関しては大まかな目安さえできれば、よいのではないかとということで、そろそろまとめてみましょう。
まとめますと、「七対子(チートイツ)のリーチは局の「終盤」にあるのが「得点面」「守備面」でバランスがよい」としておきます。
統計によれば、終盤における山に残っていそうな牌ベスト3は「1枚切れオタ風牌」「1枚切れ役牌」「生牌オタ風牌」になります。それを基本に置きつつも、終盤になると河や他家の動向から場の状況がはっきりします。よって山に残っていそうな牌が見えてきます。そういう牌で、自信を持ってリーチと行けばよいのではないでしょうか。
また当然「終盤」ではなく、「序盤」「中盤」にリーチをする場面もあるでしょう。それについてはまた次回以降に考察します。
ところで「終盤」という言葉が出てきましたが、この「終盤」って何なのでしょうか? 次回は用語の意味を再定義し、そこから七対子(チートイツ)リーチのタイミングを考察していきたいと思います。
「序盤・中盤・終盤」と七対子「初期・中期・後期」の関係
前章で、 七対子(チートイツ)のリーチは局の「終盤」にあるのが「得点面」「守備面」でバランスがよい などと書きましたが、実はこれは微妙な書き方をしています。 七対子(チートイツ)のリーチは局の「終盤」にするのが「得点面」「守備面」でバランスがよいのではないということです。
その意図するところを明確にするために、七対子(チートイツ)という手役の特性を考えましょう。そのときのポイントとなるのが「序盤」「中盤」「終盤」という言葉です。
序盤・中盤・終盤とは
「序盤」「中盤」「終盤」というと最初に何を思い浮かべるかというと、やはり「巡目」でしょう。具体的にはこうなります。
0~6巡→「序盤」 / 7~12巡→「中盤」 / 13巡~→「終盤」
しかし、もちろんそれぞれの間には明確な区切りはありません。あえて例えるなら、「序盤」「中盤」「終盤」とは、春夏秋冬といった四季のように緩やかに移ろいゆくものなのです。なのでそれぞれ±2巡ほど余裕を持たせるのが実状にあっていると思われます。図で示すとこのような感じでしょうか。
よってこの考察において、「序盤」「中盤」「終盤」とは上記の図のようなものとしておきましょう。
七対子の初期・中期・後期とは
これに関連するのが七対子(チートイツ)の手役の進行度です。七対子(チートイツ)はトイツの数を増やしていくことによって、完成に近づく手役です。そしてその性質により、3つの段階に分けられます。つまり「0~3トイツ」「4トイツ」「5・6トイツ」です。これはそれぞれこうなります。
0~3トイツ→「初期」 / 4トイツ→「中期」 / 5・6トイツ→「後期」
この「序盤」と「初期」、「中盤」と「中期」、「終盤」と「後期」には、切っても切れないつながりがあります。これが、七対子(チートイツ)のリーチは局の「終盤」にあるのが「得点面」「守備面」でバランスがよい理由になります。そして七対子(チートイツ)のリーチは局の「終盤」にするのが「得点面」「守備面」でバランスがよい、とならない理由にもなります。
味噌汁で例えるなら、味噌は煮立てると風味が飛んでしまいます。なので仕上げるために、味噌は最後に入れます。野球で例えるなら「ボーイズリーグ」の例がわかりやすいです。ボーイズリーグの小学生では身体を壊す恐れを考え、変化球の使用が禁止されているそうです。
つまりなんでも早ければ早いほどよいと思いがちですが、物事にはそれぞれ最適な時期というものがあるのです。
そしてこれまでにチートイツ「後期」の打ち方、チートイツ「中期」の打ち方、チートイツ「初期」の打ち方を考察してきました。それらには最適な時期があり、「序盤」と「初期」、「中盤」と「中期」、「終盤」と「後期」には、切っても切れないつながりがあるという話に返ってくるのです。
「盤」と「期」のつながり
たとえばチートイツ「初期」では、他家に警戒されないよう無難な捨て牌を心がけます。これは「序盤」においての戦略です。またチートイツ「中期」では、他家に誤情報を与えてミスリードさせるように残す牌を選択することがあります。それは「中盤」においてこそ威力を発揮します。
チートイツ「後期」で残す牌は、山読みがしやすい牌です。それは「終盤」こそ精度が高くなるものです。そしてその流れの先にリーチがあるのですから、当然チートイツのリーチは「終盤」にあるのが最適ともいえるのです。
もちろん「序盤」にもかかわらずチートイツ「中期」やチートイツ「後期」になることもあるでしょう。決してそれ自体は悪いことではありません。ただそれは、ボーイズリーグの小学生が変化球を教わるようなものです。時期と段階がかみ合っていないという、違和感は持っておくべきでしょう。
すなわち肩や肘に負担がかからない正しいフォームを意識し、日々体調管理を徹底しておくといったことをした上で、ようやく変化球という武器を手に入れるべきなのです。同ように「序盤」にかかわらず七対子(チートイツ)を聴牌するのは大きな武器ではあるのです。しかし、そこで安易にリーチに行くというのは必ずしも正しくありません。
かといって「終盤」まで待ってリーチをするのかというと、それもまたもったいない話です。せっかく変化球を手に入れたのですから、できるだけ早くそれを使いたいと思うのは自然なことでしょう。
そこでリーチのタイミングを早めるための何かが必要となります。先ほどのボーイズリーグの例で言えば「負担がかからない正しいフォーム」がそれに当たります。
さて七対子(チートイツ)のリーチのタイミングを早めるために必要なものは何か? それを次回以降考察していきます。
序盤七対子(チートイツ)リーチの準備
これまでの考察により、「七対子(チートイツ)のリーチは終盤にあるのが適している」となりました。これは「終盤にするのが適している」とは違うことに注意です。
つまり普通に打っていて、終盤にチートイツを聴牌をしたら、そのときは時期と段階がしっかりとかみ合っている充実感を持って、堂々とリーチするのがよいという意味です。FA権を取得する年に50本塁打を放ち、メジャー宣言をした松井秀喜のようなものです。
では「田澤純一」の場合です。彼は社会人野球から日本球界入りを拒否し、直接メジャーリーグへ進みました。「日本球界で実績を積んでからでも遅くはないのでは?」という声も多かったのですが、あえて茨の道を歩みました。
もちろん彼は何の考えもなしに、その決断をしたのではありません。金額提示ではレンジャーズが最高条件だったようですが、育成プログラムに力を入れていて、同じ日本人投手の松坂大輔がいるレッドソックスに入団を決めたことがそれを物語っています。
ちょっと話がずれてしまいましたが、七対子(チートイツ)のリーチも、それと同じようなものです。つまり序盤のチートイツ聴牌は、それはそれで大きなチャンスです。ですがそこで即リーチをするには、それ相応の覚悟と準備的なものが必要です。
では序盤七対子(チートイツ)リーチの準備的なものとは何なのでしょうか?
七対子(チートイツ)リーチの弱点は、和了り牌数が少ないために、リーチ後早い段階でツモれる保証が少ない(日本語変?)点。そして単騎待ちのため他家からの反撃があったときに、それを咎めづらい点です。となれば、その準備的なものは2つに絞られます。
1つは山にできるだけ多くある牌を待ちに選ぶこと。これはもともと七対子(チートイツ)のリーチはそこにツモを組み合わせることが望ましいという点から、最重要視されるべきことです。先ほどの「田澤純一」の例でいえば、育成プログラムがしっかりしているので、そこで力をつけてメジャーで活躍する、ということです。
もう1つは他家が不必要になりやすい牌を待ちに選ぶことです。これはいわば保険です。同じく「田澤純一」の例でいえば、尊敬する松坂大輔と同じチームになって友達になりたい(あくまでたとえ話です)ということです。大満足ではないけれど、悪くはないという感じです。
これら2つの準備について、いろいろな牌の種類ごとに考えてみたいところですが、あまり長くなりすぎてもアレなので、今回はここまでにしてそれを次回以降考察していきます。
序盤オタ風牌単騎リーチの考察
序盤のチートイツにおいて、「山にできるだけ多くある牌を待ちに選ぶ」「他家が不必要になりやすい牌を待ちに選ぶ」ことで、リーチに行きやすいという話をしました。その条件にどういう牌が当てはまるのでしょうか。まずは「オタ風牌」から考えてみましょう。
オタ風牌は面子化しづらいですから、他家にとって不必要になりやすい牌です。不必要ということは捨てられやすい。つまり河に1枚も見えていないということは、自分が持っている1枚以外の残り3枚は山にある、という読みができます。「生牌オタ風牌待ちリーチ」は2つの準備ができているので、序盤七対子(チートイツ)におけるよいリーチといえそうです。
しかし河に1枚も見えていないからといっても、ある特定の他家が2枚ないし3枚とも配牌から持っている可能性があります。その場合「山にできるだけ多くある牌を待ちに選ぶ」という前提ができていないので、そのリーチは失敗なのでしょうか。
逆の立場で考えれば分かりますが、実はそのような場合でも失敗にはなりません。オタ風牌の対子ないし暗刻は、役の構成要素として意味を成しづらいからです。
オタ風牌のトイツを持ったまま、手作りをしている人がいます。そこにリーチがかかりました。それが「ドラ牌のトイツ」なら、もちろん切りません。しかし「オタ風牌のトイツ」なら捨てる可能性があります。
つまり「生牌オタ風牌待ちリーチ」では、読みが外れて山に牌がなかったとしても、回し打ちを考える他家からの振込みによっての和了りも見込めるのです。もちろんこれは不必要になりやすい牌を選んでいたことによる保険が利いていたためで、大満足ではないけれど悪くはないという感じです。
他家が手牌の中に1枚抱えていることは、オタ風牌は不要になりやすい牌ですからそれほど多くないでしょう。ただオタ風牌とはいえある特定の人にとっては自風牌になるわけですから、その人なら1枚持っていて重なるのを待っていることはあるかもしれません。その場合山に2枚になります。
その状況での「生牌オタ風牌待ちリーチ」はツモとしては中程度(山3よりは落ちるけど山1よりはよいということ)ですが、1枚持っている他家からすると生牌になりますから出和了りは期待できないかもしれません。
しかし出さないとすると他家はその1枚の牌を重ねることでしか和了れないことになります。万が一重ねたとしても2枚では役にはなりません。こうなると、回し打ちを考える他家の出和了りの可能性もでてきます。
待ちにしているオタ風牌の対象となる他家がその牌を3枚持っていた場合、「生牌オタ風牌待ちリーチ」は厳しい状況に立たされます。相手が弱気ならオリ打ちしてくれるかもしれませんが、風牌暗刻なら少し頑張ってみようと思うかもしれません。すると自分の和了り牌はなく、相手の反撃を咎める術もないということになります。
ただ、そのような状況になるのはレアケースです。あまり考慮に入れなくてもよいでしょう。
まとめると「生牌オタ風牌待ちリーチ」は序盤七対子(チートイツ)リーチに有効だろうということです。普通っちゃ普通の結論です。次回は役牌リーチについて考察します。
序盤役牌単騎リーチの考察
序盤のチートイツにおいて、「山にできるだけ多くある牌を待ちに選ぶ」「他家が不必要になりやすい牌を待ちに選ぶ」ことで、リーチに行きやすいという話をしました。その条件にどういう牌が当てはまるのでしょうか。今回は「役牌」について考えてみましょう。
さて場風を含む役牌は、オタ風牌と同じような考えでよいのでしょうか。生牌のオタ風牌はその不用性から基本的には山に3枚あると見てよいとしましたが、役牌はそうとは言えないようです。重ねることさえできれば後はポンするだけで役ができますし、もちろん状況や手牌のその他の部分との兼ね合いによりますが、他家に対しての絞りを考えてもまずオタ風牌よりは役牌は後に切られることが多いです。
同様の理由により、役牌は孤立数牌よりも後に切られることが多いです。守備的に構える人なら、好牌先打の際に残される牌が役牌になることも多いです。つまり生牌の役牌に関しては必ずしも山に3枚あるとは言い切れません。「山に多くある牌を選ぶ」という1つ目の準備が、不完全になっているのです。
ではもう1つの方の準備である「他家にとって不要な牌を選ぶ」に関してはどうでしょう。ポンして役ができるというのはかなり魅力です。手牌に1枚しかない場合それを重ねることは難しいですが、そこさえクリアすれば一役が計算できるので特にクズ配牌のときなどは残される傾向にあります。するとこちら側の準備に関しても不完全になっているようです。
しかしよく考えてみれば、孤立役牌が他家にとって不要牌にならないケースというのはクズ配牌のときが多いのですから、その立場でリーチをかけられたことを想像すると案外そのリーチは悪くないかもしれません。というのもクズ配牌ですから和了りは半分諦めています。となればベタ降りです。現物が無くなれば頼るのは「壁」「筋」「字牌」になります。役牌の場合それで振り込むと1役プレゼントしてしまうことがありますのでやや後回しになるかもしれませんが、無筋牌よりは切られやすいと思われます。
ちなみに「科学する麻雀」p199~によれば「現物 > 単騎字牌 >> 筋1・9牌 > 単騎以外字牌 > 筋2・8牌 > 筋3・8牌 > ワンチャンス」となっています。これに丸々則って降りてくれるのなら出和了りの期待は持てそうでしょうし、もちろん好配牌(タンピンができそうって意味ね)時の孤立役牌は不要牌以外の何者でもありませんから切られやすいでしょう。
また当たり牌を抑えられた場合も、その役牌を握っている他家の和了をつぶしたと考えると最低限の成果をあげられたとしてもよいでしょう。山にある2枚の役牌がまた別の他家のもとに行ったとすれば2人、さらに最後の役牌がさらに別の他家にもとに行ったとすれば全員の手をつぶしたことになります。
他家がもともと持っていた孤立役牌を重ねられてしまった場合でも、そこからポンの可能性がありませんから和了につなげるのは難しそうです。その他家に3枚目をツモられるととたんに和了り目が出てきますが、まぁそれはレアケースとしてよいでしょう。
しかしなおよく考えてみると、言うまでも無く七対子(チートイツ)は単騎待ちですから待ち牌のうち1枚を他家に持たれているとすると、山にあるのはわずか2枚です。するとこれはそう簡単にツモることはできません。簡単にツモることができないということは無駄ヅモを重ねることが想定できるということです。無駄ヅモが続けば当然安牌が増えます。
「科学する麻雀」のベタ降りリストによれば「筋1・9牌」の次、「筋2・8牌」の前に切られることが期待されますが、それはオタ風牌を含めての話です。役牌の生牌に限定して考えてみると、「筋2・8牌」はもちろん「筋3・8牌」との優劣も難しいでしょう。そうなれば安牌の範囲も広がり、ますますこの序盤役牌リーチの決着が遅くなります。そして決着が遅くなればなるほど他家にとって生役牌の危険度が上がり、結果として出和了の期待ができなくなるかもしれません。
さらに序盤役牌リーチは1人ないし2人、運がよければ他家全員の和了目をつぶすことができるとはいえ、逆に運が良くなければ1人ないし2人の反撃を喰らう可能性が十分あるとも言えます。そして実際に反撃を喰らった場合こちらの待ちは単騎ですから、かなり分の悪い勝負となってしまいます。
ここで逆に「序盤生牌役牌リーチ」にとってよい条件を付け加えてみましょう。
切られていない役牌の種類が多い
他家が役牌を絞ろうとするならそれだけ手をつぶす可能性が高まる。
自分が親番
振り込むと大打撃を受けてしまうかもしれないので、降りる可能性が高い? 東場ならなおさら?
自分以外の三家が接戦
振り込みたくないから降りてくれる? 南場ならなおさら? でもオーラスは違うかなぁ。
つまり「序盤生牌役牌リーチ」はメリット・デメリット双方あって、積極的にすべきものではないといえるかもしれません。むしろダマにしておいてオタ風牌と入れ替えるなり、1枚切れの役牌などと入れ替えるなりしてからリーチといくのがよいのではないかと思われます。
結局何が言いたいかというと、生牌の役牌での「序盤役牌リーチ」は2つの準備の両方が不完全ということです。上記のような状況があって他家が降りてくれるならいいけれど、そうでないなら自重するのがよいのかな、というのが私の結論です。
「チートイツのリーチ判断」の章にて改めて後述しますが、生牌の役牌の場合、ダマに構えておいて序盤なら出てもロンしない選択もあります。その直後あえて一枚切れ役牌になった状態で、ツモ切りリーチとします。これなら十分勝算があります。
次回は「序盤に切られた牌のそばリーチ」について考察します。
序盤隣牌単騎リーチの考察
序盤のチートイツにおいて、「山にできるだけ多くある牌を待ちに選ぶ」「他家が不必要になりやすい牌を待ちに選ぶ」ことで、リーチに行きやすいという話をしました。その条件にどういう牌が当てはまるのでしょうか。今回は序盤に切られた牌のそば牌、いわゆる「隣牌」について考えてみましょう。
具体的に2つのパターンに分けます。
まずはが切られたときのです。いわゆる(?)内隣牌ってやつですね。 話を単純にするために2人麻雀と考えてみると、序盤に相手からが切られた場合、そのそば牌であるは山にある可能性が高いです。ということで「山にできるだけ多くある牌を待ちに選ぶ」という、1つ目の準備に関しては充分と言えるでしょう。
では「他家が不必要になりやすい牌を待ちに選ぶ」という2つ目の準備に関してはどうでしょう? よくあるパターンでとあればを切る、というのがありますが、これはがあることでを引いたときにがなくても無駄にならない、というのがその理由です。ということで序盤にが切られたからといってが不必要になりやすいとは言えないわけで、2つ目の準備に関しては不十分と言わざるをえません。
ということでこの内隣牌を待ちにした序盤リーチは、アリっちゃアリだけど、長引くとまずいと思われます。たとえば点数的に厳しく手の内にドラドラがあってここはツモらなくては話にならないというときなんかは有効なリーチになるでしょう。逆に局を流せればよいという場面でこんなリーチをすると、反撃を喰らい痛い目にあうなんてことになりかねないんじゃないでしょうかねぇ。しらんけど。
次にが切られたときのです。いわゆる(?)外隣牌ってやつですね。からを先切りする人は少ないです。よって序盤にが切られた場合、その手牌にはほぼありません。ということでやはりこちらも「山にできるだけ多くある牌を待ちに選ぶ」という、1つ目の準備に関しては充分と言えるでしょう。
では2つ目の準備に関してはどうでしょう? からの先切りする人は少ないでしょう。なので、この人はをツモっても、それをツモ切ると考えられます。つまり「他家が不必要になりやすい牌を待ちに選ぶ」という2つ目の準備に関しても充分と言えるのです。
さてこれまで序盤七対子(チートイツ)リーチに最適な牌種を探す旅を続けてきましたが、「外隣牌」ほど2つの準備がここまでともに充分である牌種はありませんでした。あの最強と思われた「オタ風牌」ですら、ある特定の他家にとっては「役牌」であることから若干の不十分さがあったのです。序盤七対子(チートイツ)リーチ最優秀牌種賞は「外隣牌」に決定です。
そのとき嫌な予感が走った。何かオレたちのやり方に決定的な欠陥、ほつれのようなものがあって、そのほつれをひっぱられると、すべてがバラバラに解け散り崩壊・・・そんな予感・・・
そうです、麻雀は4人でするものです。話を単純にするために2人麻雀で考えていましたが、実際には相手は3人います。するとある特定の人に対しての「外隣牌」は2つの準備ともにその特定の人に対して充分ですが、他の人にまったく当てはまりません。やはり「外隣牌」も1人だけでは不十分なのかなぁ、というのが私の結論です。
ということで、次回は「外隣牌」が複数→壁の外側リーチについて書きたいと思います。
序盤壁の外側リーチの考察
序盤のチートイツにおいて、「山にできるだけ多くある牌を待ちに選ぶ」「他家が不必要になりやすい牌を待ちに選ぶ」ことで、リーチに行きやすいという話をしました。その条件にどういう牌が当てはまるのでしょうか。前回の隣牌に続きまして、今回は「外隣牌」が複数リーチ→壁の外側牌リーチについて考えてみましょう。
「外隣牌」も1人だけでは不十分なのかなぁ、というのが前回の結論でしたが、ではそれが2人に当てはまるとすればどうでしょう? そうするとレベルはかなりあがりますが、まだ不十分です。「オタ風牌」にはおよびません。3人に当てはまるとすれば、これは文句なしで最強の序盤七対子(チートイツ)リーチ牌になります。 しかもよく考えてみるとそれはの三枚壁が河に浮かび上がる状況となり、2番目の準備である「他家が不必要になりやすい牌」を補完することになる、つまりこの「外隣牌」と「壁」は互いに補完しあう存在なのです。
他の三家それぞれが序巡にを切れば、「外隣牌」のが序盤七対子(チートイツ)リーチに最適であることはすでに述べましたが。しかしそれがある特定の家によるものであったとしても、「三枚壁」が河に見えている状態であれば、その「外牌」はかなり優秀であるといえます。
ただ注意すべきなのはその「三枚壁」が河に見えた瞬間にその「外牌」の優秀性が確定しないということです。その優秀性を確定させるためにはその後最低1巡、余裕があれば2・3巡は欲しいところです。
つまり「壁」は2番目の準備である「他家が不必要になりやすい牌」であることを直接的にあらわすものでありますが、1番目の準備である「山にできるだけ多くある牌」を直接あらわすものではないからです。しかしその後数巡経過する中で「外牌」が切られないならそれが他家の手牌に存在しない、そして山に多く存在することが推測できるのです。
またこれにより1つの戦術が考えられます。
ある特定の他家が「3・7牌」を序巡に切ってくれば、自分もそれに合わせ打ちするというものです。仮にその「3・7牌」がかぶってしまったとしても河に「三枚壁」が出現するため「外牌」を狙いやすくなるというわけです。つまり七対子(チートイツ)のエース牌は、基本的にオタ風牌のようにもともとその牌自身が持つエネルギー(?)によるものですが、それを自らの力で作り出そうというのです。
しかし以前私は、「3・7牌」はトイツ場傾向を計るために重要なので1枚切られてもすぐ合わせ打ちしない、と書いていました。矛盾するようですが、これもまた1つの戦術です。「3・7牌」を自分の手牌に抱え込むことで他家の読みを狂わせたり、手の進行を妨げたりしようというものです。さて、「3・7牌」は合わせるべきか合わせざるべきかどちらが有効な戦術なのでしょう?
まず1つ考慮に入れるべきなのは、上記の「3・7牌」を合わせないという戦術は「4トイツ」時の打法ということで書いたものだということです。つまり「5トイツ」の段階では、山に残る枚数が多いものを残すという基本戦略どおり、「3・7牌」は合わせ打ちすべきでしょう。
問題は「4トイツ」ときに合わせるべきか合わさざるべきかなのです。結論から言いますとその時の気持ち次第でしょう。つまり自ら和了って決着をつけようとするなら、やはり合わせ打ちを選択するのがよいでしょう。今回の場合テーマが「序盤リーチ」ですので、それを念頭に置くなら当然合わせ打ちになります。
ただ私が提唱する「トイツ系牌効率」の精神が「諦めの心」であることを考えると、トイツ系牌効率において「4トイツ」ときには「3・7牌」を合わせないのが本筋です。特にその「3・7牌」を切ったのが下家以外で、かつ下家が親という状況ならば「3・7牌」を合わせず静かに牙を研いでおくのがよいかもしれません。
ここまで河にできた「壁」について話を進めてきましたが、自分の手牌の中でできる「壁」もあります。今ここで話題にしているのは七対子(チートイツ)についてですから、河に1枚がでており自分の手牌に2枚があるなど、他家には分からない自分だけが知ることのできる「三枚壁」の存在です。そのときのは河にできる「三枚壁の外牌」同様、序盤七対子(チートイツ)リーチに適する牌種なのでしょうか?
2番目の準備である「他家が不必要になりやすい牌」には、潜在的には当てはまりそうです。たとえば他家がと持っていてもなかなかをツモれない。そのうちにをツモりが切り出されるという具合です。ただそれが表面化するには時間がかかるため、早期決着には向かないかもしれません。また1番目の準備である「山にできるだけ多くある牌」かどうかについては、不十分と言わざるをえません。
よって自分の手牌によって判断できる壁の「外牌」は、序盤七対子(チートイツ)リーチにそれほど向かないのではないかというのが一応の結論です。一応2番目の準備が潜在的にでも当てはまっているので、単なる数牌よりは七対子(チートイツ)リーチに適しているとは言えますが、基本的にはよりよい牌がくるまでのつなぎの役割を果たすものであり、それで積極的にリーチに行かなくてもよいのでは? と言ったところでしょうかね。
チートイツのリーチ判断
チートイツのリーチ基準の大枠は「先制ならリーチ」「後手ならダマ」で異論はないでしょう。ですが先制でもダマにすべき場面、後手なのに追いかけリーチをする場面もあります。それについて考えていきましょう。
先制なのにダマにする場面
手替わりを待つ
先制で聴牌したのに、ダマにする場面の一つは待ちが悪いときです。筋にもなっていない3~7の数牌単騎待ちが、それにあたります。
「科学する麻雀」P121では「6巡目まではダマにして、いい牌を待つ」とあります。しかもチートイツのみなら、当たり牌が出てもロンをしないとも書いてあります。そして10~15巡目はどの牌でも即リーチとのことです。
ちなみに「うに丸式セオリーで勝つ麻雀」P61では、ドラなしの場合、生牌1・2・8・9牌とスジ牌全て、1枚切れ1・9牌とスジ1・2・8・9牌は即リーチがオススメです、とあります。
「ブラコン女子大生の最短で強くなる麻雀」P81には、チートイリーチ基準としてこうあります。
生牌 | 1枚切れ | 2枚切れ |
---|---|---|
字牌 1・9牌 2・8牌 3~7牌(筋待ち) | 字牌 1・9牌 2・8牌(筋待ち) | 字牌 1・9牌(筋待ち) |
トイツ系牌効率としては、七対子のリーチ基準をもう少し厳しくしたいです。
序盤のリーチには準備が必要だと、上記で述べてきました。「山にできるだけ多くある牌」「他家が不必要になりやすい牌」の2つの条件を満たす牌です。つまり序盤は「一枚切れ字牌」と「オタ風生牌」のどちらかならリーチ、それ以外ならダマとします。
「科学する麻雀」にあった「当たり牌か出てもロンしない」のも面白いです。例えば生牌の役牌で聴牌していてそれが出た場合、見逃して同巡ツモ切りリーチです。序盤ならではのリーチですが、かなり和了れそうです。もちろんそのまま和了るのも、いいと思います。
中盤になれば字牌とスジ1・2・8・9牌ならリーチ、それ以外ならダマでいいでしょう。終盤は先制なら、なんでもリーチです。とはいえ終盤のイーシャンテンなら、山に残っていそうな牌か、切りづらい牌しか手に残していないはずです。その意味でもリーチになるはずです。
もちろん巡目が進むにつれて、場の状況が明らかになっていきます。相手からの逆襲が来そうなら、ダマに判断が傾きます。
ドラドラがある場合
手の中にドラドラがある場合は、得点的にダマにしても十分です。ですが、リーチしてツモれば跳満になりますから、それも魅力的です。
「超・入門科学する麻雀」では「4ハン以上の場合、ダマにして手替わり待ち。字牌待ちならリーチもあり。スジになっていれば数牌でのリーチも悪くない」とあります。
トイツ系牌効率も、これと同様です。巡目に限らず、基本的にはダマで出和了ります。自信のある待ち牌になった段階で、リーチで跳満を狙えばよいでしょう。
ドラ待ち
ドラ待ちになった場合はどうでしょう。これは基本的にはそのままダマで、ドラ牌がこぼれるのを待つ戦略になります。とくにそれが字牌なら、リーチをするかしないかによっての和了率の差が大きくなりすぎるので、ダマが優位なのではないかと考えます。
では数牌がドラの場合はどうなるのでしょうか。「現代麻雀技術論」P74では、「無スジ1・9牌=無スジ2・8ドラ単騎>無スジ3~7ドラ単騎」となっています。つまり「無スジ3~7ドラ単騎」でリーチするよりも、「無スジ1・9牌」でリーチした方が収支が良いと述べています。
もちろんきちんとしたデータがあっての話だとは思います。ですが「トイツ系牌効率」は、受けのチートイツです。そこを加味して、もう少し条件を厳しくしたいです。そこで「字牌>数牌ドラ」とします。
つまり数牌のドラ単騎で、聴牌したら、ダマにしてこぼれれば6400点で和了ります。これはこれで十分うれしいです。そして自信のある待ち牌に変化すれば、そこでドラを切ってリーチと行きます。これが和了率と得点と他家からの反撃を考えるとバランスが良いのではないかと考えます。
ただ数牌ドラ単騎でのリーチにおいて、得点面以外にも見逃せない利点があります。それは決してドラで振り込むことがないという点です。この利点はけっこう大きいのではないかと考えます。
もちろん点数に余裕がないときは、ドラ単騎リーチで跳満を狙います。ですが逆に点数に余裕があるからこそ、ドラ単騎でリーチをする。そして仮に反撃されて振り込んでしまったとしても、ドラではないので致命傷にはならないという考えもあります。ならば特に親番なら、ドラ単騎リーチを使いやすいかもしれません。
ということで、トイツ系牌効率的ドラ待ちチートイツの基本は「字牌>数牌ドラ」、状況によってはドラ単騎リーチもあり、としましょう。
追いかけリーチをする場面
チートイツは最大3枚しか待ち牌がありませんから、追いかけリーチは不利です。なのに追いかけリーチをする場面は、どういうものになるのでしょうか。
終盤で字牌待ち
まず巡目の問題があります。単純に待ち枚数でいえば、チートイツは不利です。なので序盤で対決になると、その不利な時間が多く続くので、より負けやすくなります。逆にいえば終盤なら、すぐに決着がつくので、不利が表面化しない可能性が上がります。
また、単純に一対一の対決ではチートイツは不利です。そこで他家を利用する必要があります。一軒リーチなら現物でしのげる人も、二軒リーチとなると安全牌に困ることがあります。そこで比較的安全に思える字牌が打ち出される可能性が上がります。
そう考えると、最初にチートイツは待ち枚数的に不利だと言いましたが、実はそれほど不利ではないかもしれません。つまり先制リーチ者リャンメンの待ち枚数が、山に4枚だとします。チートイツ単騎の待ち枚数が、山に2枚だとします。
リャンメン待ちはスジになっていますので、オリられると当たり牌はなかなか出てきません。ですがリーチをかけている人からは、もちろん切られます。つまりこの4枚の待ち牌は、リーチをしている二人でツモっているのと同じようなことです。
対して単騎待ちの2枚は、安全牌と考えられやすい字牌です。なら二軒リーチという状況も合わせて、オリている人からもより場に放たれやすいです。つまこの2枚の待ち牌は、卓上の四人でツモっているのと同じようなことです。
もちろん字牌だからといって、すぐに切られるとは限りません。それよりも安全な牌があれば、そちらが優先されます。ですが、単純な「4 VS 2」という見た目よりは、かなりいい勝負になりそうです。自分が振り込むことだけを「負け」と考えるなら、そうならない確率の方が高いです。
つまり終盤で字牌待ちなら、追いかけリーチをかけてもよいでしょう。もちろんこれも状況によりけりです。得点に余裕があるなら無理する必要はありませんし、拮抗している場合でも無理せずダマにするのがよさそうです。
ですが得点的に厳しい状況ならもちろんリーチですし、和了らせたくない相手からのリーチならそれを阻止する意味でリーチをぶつけるという選択もありそうです。つまり先制されたチートイツは、基本はダマで、終盤で字牌待ちなら状況によっては追いかけリーチも可ということです。
ということで、チートイツ追いかけリーチの実戦譜です。
単騎で聴牌していましたが、特に自信がある待ちでもないし、ドラドラありますからダマ聴にしていました。「4ハン以上の場合、ダマにして手替わり待ち」という、上記のダマ聴基準とも合致しますね。
そこに対面からリーチがかかりました。こんなことになるならさっさとリーチして、押さえつけておくべきだったかな?
前巡めちゃくちゃ危ないを叩き切って単騎ダマ継続。そこにを引いてきました。さてどうしましょうか。
は通りそうなので、そのままツモ切ってダマ継続…?
私の選択は単騎待ちリーチです。対面に対してはが早いことからは通りやすそうです。私の捨て牌からもが当たり牌になるようには見えません。なら2件リーチに窮した他家からの出和了の可能性も十分あります。
また上家が固めて持っていなければ、は山に全部ありそうです。つまりこのは、オタ風の字牌みたいなものです。
結果としては対面から一発でが出てきて、なんと裏ものって親の倍満でした! 対面は–待ちで、単純な枚数では負けています。ですが2件リーチに対して、他家からはまず–は切られないことと、は切られやすいことから考えると、それなりにいい勝負にはなると思います。
とはいえ決して分の良い勝負とも言えませんし、ダマにしていてもは出やすい牌でもありましたから、無理にリーチに行かなくてもよかったかもしれません。それでも私がリーチをすることでがより切られやすくもなっていますから、難しいところではあります。
今回はラス争いをしている相手からのリーチで、しかも自分が親でしたから、降りる選択が取りづらかったのはあります。これがもっと序盤だったらとか、点数をもっと持っていたトップ目だったらとか、いろいろ条件が変わると判断もまた変わってきそうではあります。
トイツのスジ牌待ちリーチ
ツモ
さてここから何を切って、どうしましょうか。普通に考えれば、を切っての単騎待ちでリーチと行きたいところです。あるいはもっといい待ちを求めて、ダマにするのもありでしょう。実はこれは第四回名人戦予選第13戦における、土田浩翔先生の実戦譜です。となれば、予想はつきますよね。
じつはこの時、他家から先制リーチがかかっていたのですが、土田浩翔先生はここから切りの単騎で、追いかけリーチです。そのことについて土田浩翔先生は、のちのインタビューでこう語っています。
「一応、あのー…へんてこな理屈で…自分手牌にあるトイツの筋で待つとツモるんじゃないかっていう…こう自分の考え方で…」
トイツの牌があると、その筋牌を引きやすくなるという、いわゆる筋トイツ理論です。土田浩翔先生はえらく謙遜しながら語っていましたが、その状況を踏まえてみてみると、全然へんてこな選択ではないと思います。
第四回名人戦予選第13戦 南3局 ドラ
東家 土田 16,700点
ツモ
西家 金子 30,200点
南家 五十嵐 32,300点
北家 小島 20,800点
局も押し迫った南3局、土田浩翔先生は16,700点のラス目の親番です。そして西家の金子からリーチがかかりました。その次巡、親の土田浩翔先生がチートイツを聴牌したところが、現局面です。単騎か単騎かの選択です。
はリーチの金子の現物で、かつ自分の捨て牌にあるの筋ですから、他家から出やすいかもしれません。ですが自分の捨て牌があまりに変則手っぽいし、はすでに2枚切られているので、残りは1枚しかありません。現実的に考えて安全牌のを切って、単騎にするべきでしょう。
次はリーチをするかどうかです。点数的にはもちろんリーチをしたいです。ですが問題は、この待ちで勝負になるのかどうかです。先制リーチ者の金子は、トップとも近い二着目です。悪い待ちなら、この終盤でリーチはしてこないはずです。
普通に考えると、単騎では勝負になりません。では手替わり待つのかというと、よさげな牌はくらいしかありません。そもそもに手替わりをしたとして、その時にが切れるのかという問題もあります。
の出が早いですが、金子はドラのを2巡目に切っており、その時点で攻める気満々です。ならは先切りの可能性があるかもしれません。そう考えると自分から4枚見えているの筋は、簡単に切れる牌ではありません。もちろん「–」は普通に無筋です。
は切りづらい。しかし点数がない親番という状況的に、オリることはできません。優秀な手替わりもさほどない終盤。となればここは不利は承知でリーチと行くべきでしょう。つまりこれは自信を持ってのリーチではなく、状況がそうさせたギャンブルリーチなのです。
結果は…
東家 土田 16,700点
ツモ
西家 金子 30,200点
南家 五十嵐 32,300点
北家 小島 20,800点
なんとの一発ツモ‼ しかもそのは先行リーチ者の金子の当たり牌でもありました。
土田先生はがトイツなので、その筋のを引きにいったと言います。私はがトイツの筋のは危険なので切りづらいと言います。道筋は違っていても、どちらも同じ手順になることに注目です。
「トイツ系牌効率」では、筋を狙うのは4トイツ時であって、基本的にイーシャンテン以降は山にある牌を残すようにします。ですが攻め返されそうな場況なら、トイツの筋を切らずに残す選択もあります。相手の手を進めない、最悪それでロンされないためです。その行きついた先が、スジ待ちリーチとなるわけです。
つまり土田先生のトイツのスジ待ちは、攻めのチートイツ。「トイツ系牌効率」のトイツのスジ待ちは受けのチートイツ。心の持ちようが正反対にもかかわらず、同じ打牌になるのが面白いところです。
まとめると、状況によって切れない牌を待ちにした、追いかけリーチはありえます。暗刻の筋牌は相手に埋まっていない可能性が上がるため、危険なのと同じ理屈で、自分がトイツで持っている牌の筋も危険度は上がります。よってそういうときのリーチは、トイツのスジ牌待ちリーチの可能性が高まるのです。
ドラ待ち
リーチに対して切りづらい牌にはドラ牌もあります。ドラ牌で振り込むともちろん点数が高くなります。また点数をあげるために、ドラを組み込めるよう手作りするので、最終的にドラ待ちになることも多くなるからです。
リーチに対して切れないドラを手にしたまま、自分の手がドラ単騎で聴牌した場合は、トイツの筋牌と同様の理屈で、追いかけリーチもありかもしれません。
数牌のドラは特にその傾向が強まります。つまり降りるならしっかり降りる。行くなら数牌のドラ牌で追いかけリーチということです。行くけれどとりあえずダマというのは、基本的にはない選択かと考えます。
字牌のドラなら、また別の選択もあります。というのもリーチ者の待ちが、字牌のドラであるかどうかの判断がつけやすい場面も多いからです。
まず相手の心理として、役ありの字牌ドラ単騎なら、ダマでこっそり待ちたいです。役なしのドラ単騎なら、思い切ってのリーチもありますが、それはギャンブル的なやり方です。普通はより良い形でリーチをしたいと考え、ダマにしそうです。つまりリーチがかかっているなら、そのリーチには字牌ドラ単騎が基本的にはないと考えられます。
もちろんリーチ者が字牌のドラを暗刻にしているなら、こちらのドラ牌切りはロンにはなりません。
リーチで字牌のドラが当たるのは、シャンポンのパターンが多いです。待ちの形が変わりづらいため、そのままリーチと行くからです。その場合チートイツの字牌ドラで聴牌している自分の待ちは、残り1枚しかありません。とはいえその場合ロンされてしまうので、待ちを変えるわけにはいきません。なら行くのであれば、不利は承知でリーチと行くしかないと考えられます。
とはいえ、そんな字牌のドラシャンポンの薄い可能性1パターンだけですし、もしそうなら役牌の出が遅くなるなど、河にその傾向が見えそうです。そこに気を付けておけば、リーチに対して字牌のドラはむしろ切りやすいのではないでしょうか。
ですが、麻雀とポーカーは似た部分があります。特にこの字牌ドラ単騎に関しては、特にポーカーのブラフかどうかの駆け引きに似たものがあるように感じます。
つまりポーカーであれば、チップに余裕があり、自分の手がフラッシュなりフルハウスなり高い手ができたときは、相手が前に出てきやすいように控えめにベットするのがセオリーです。くず手の場合にはあえてオールインで、相手を降ろしてしまう戦術もよくあります。そしてそれを逆手にとって、オールインなのに高い手という裏の裏をかく戦術が生まれるのです。
そこでその裏の裏の戦術と同様に、字牌のドラ単騎なのにあえて先制リーチをするという考えもあります。また、たいした考えなしにドラ単騎ならリーチという人もいるでしょう。
「カイジ」の「17歩編」で、このようなシーンがあります。
本当はですね 三好…手牌選択のとき…この牌…こので待つこともできた…つまり…この形の単騎待ちもできた これで待てば…裏ドラなど関係なく倍満手っ…! しかし…ククク…! 切ってくれんでしょ さすがにこのは…! ねぇ…! ククク…クク…ククク…
そりゃあ…切らねぇ…! 打てる牌じゃねえっ…! しかし…ギリギリの状況になったら…逆に…通る牌か…? この手の…単騎は…! 超危険牌ゆえ…! 逆にセーフ…! ここ一番じゃ セーフ…! 待つ牌じゃない…!
しかしそれらはあくまで奇襲です。ポーカーにおいてオールインにはブラフが多いことを考えると、やはりリーチには字牌ドラ単騎待ちがないと考えるのが普通でしょう。
とりあえず先制された際の字牌のドラ単騎なら、より切り切れない牌を引くまではダマにしておき、危険牌と入れ替えて追いかけリーチと行く手もありそうです。または終盤になれば、勝負が長引かないと考え、そこで字牌ドラ待ち追いかけリーチもありかもしれません。
と、いろいろ書きましたが、この辺の話は点数状況やレベル、対局者心理も大きく影響しますので、一概にコレというのは難しいです。その状況状況によって臨機応変に対応していくべきでしょう(なげやり)。
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