いよいよ「土田システム・トイツ理論」の解明に乗り出します。
本のレビューでは、「オカルト100%」「電波全開」「めちゃくちゃ」「一般人には理解できない」「冗談半分」「ギャグ」などなど、さんざんな言われようです。
しかしこれまで説明してきた「トイツ系牌効率」の考え方を通してみると、「土田システム・トイツ理論」は、思いのほか筋が通ったシステムというのが理解できるでしょう。
土田システムの解明
土田システムとは
さて「土田システム」とは何なのか? 知らない方のために「最強麻雀 土田システム (マイコミ麻雀BOOKS)」のP70より、引用させていただきます。
Ⅰ・手牌にあるトイツのスジ牌が重なる
Ⅱ・トイツの遠いスジは重ならない
Ⅲ・リャンメン部分がトイツになったら、即リャンメン部分を拒否して隣を捨てる
Ⅳ・イーペーコー部分は完成しやすい
いろいろ突っ込める部分がありますね。
まず「Ⅰ」と「Ⅱ」を総合して考えると、のときのは重なるけどは重ならないということでしょうか。ではのときのはの筋なのか? それともの遠い筋なのか? どちらになるのでしょうか。
「Ⅲ」と「Ⅳ」を総合して考えると、からを重ねてになったとします。のリャンメン部分がトイツになったからを切るのか? それともイーペーコー部分なので残すのか? どちらになるのでしょうか。
いや、私は土田浩翔先生のシステムに、ケチをつけているのではありません。上記のシステムは非常に平易な言葉で書かれているため、逆にその意図が見えづらくなっているのです。
しかし本来は、きちんとした理屈にしたがって示されたシステムなのかもしれないのです。その一端を私が解明していきたいと思います。
手牌にあるトイツのスジ牌が重なる
まずは「Ⅰ・手牌にあるトイツのスジ牌が重なる」からです。
これは今までに何度も出てきましたね。「トイツ場だから筋が重なる」のではなく、本来は「筋が重なるからトイツ場と判断できる」が正しいです。しかしそこをあえて「トイツ場は筋牌が重なる」と言った、土田浩翔先生の意図については、ここでは繰り返しません。詳しくは「トイツ場と筋牌の関係」を参照してください。
トイツの遠いスジは重ならない
次に「Ⅱ・トイツの遠いスジは重ならない」です。
筋には「1-4-7」「2-5-8」「3-6-9」の3種類があります。このうちこのシステムに明確に当てはまるのは、「1-4-7」の「1」と「3-6-9」の「9」です。
具体的に言うととあった場合が重なり、となれば、このシステムどおり、遠い筋のを切ります。を残す意図はわかりますね。これも今まで何度も述べてきましたが、がトイツになったときのはトイツ場を計る鍵です。かつシュンツ手をやっている人にとっても、鍵になる牌だからです。
それに対しては、単なる端牌にすぎません。「1・9牌」だから山にあるかどうか読みやすいのは確かです。しかし、首尾よくその後を重ねることができたなら、そのメリットも薄くなります。スライドの可能性が少なくなるので、は切られづらくなるからです。「4トイツ時(二向聴時)の1・9牌」の項でも説明しましたね。
したがって、とあれば同じ端牌ですが、ではなくを切ります。近い筋のは狙いますが、遠い筋のは重ならないと考えて、切ってしまうのです。
ちなみに「2-5-8」の筋についても、消極的にですが同様のことが言えます。
相手がと持っているとします。その相手がをツモれば、スライドで端に近いが打たれることが多いです。しかしと自分が持っていた場合、自分がをトイツで持っているため、そのスライドは起こりにくいです。つまりの山読みがしづらいのです。
確かにを重ねることに成功して、と筋を押さえられたら、他家は手作りをしづらくなります。ですが、「2-5-8」と二筋おさえてできるのと同様のことが、「3-6」「4-7」と一筋おさえるだけでできると考えると、やはり「2-5-8」は効率が悪いです。
そういうことでとなれば、近い筋のは狙いますが、遠い筋のは狙わず切ります。
以上のことから、土田浩翔先生は「トイツの遠いスジは重ならない」と考えて、それほど大事に取っておかなくていいんだよ、とおっしゃっているのです。(知らんけど・・・)
両面部分がトイツになったら、即リャンメン部分を拒否して隣を捨てる
そして「Ⅲ・リャンメン部分がトイツになったら、即リャンメン部分を拒否して隣を捨てる」です。
これも今まで何度も例に出てきましたね。からはを切るなどです。トイツ場の傾向を読み取るために筋牌が大切であることを、私は何度もこの研究発表で述べてきました。
またトイツ場の傾向を読み取るために、重なれば制限する牌が多いように残す、とも言ってきました。上記のシステムはそれの逆説的表現(?)ともいえるのではないでしょうか。
イーペーコー部分は完成しやすい
最後に「Ⅳ・イーペーコー部分は完成しやすい」です。
たとえばとあった場合、先ほどの「Ⅲ」の説明では、仮にを重ねることができても、それでトイツ場の傾向が読み取れるわけではありません。なのでからを残す価値は低いのではないかと思われます。
しかし自分がとをトイツにしているなら、相対的に他家には・が存在する可能性が少なく、があった場合は孤立している可能性が高くなります。当然孤立したは場に出やすい牌になります。つまり「準字牌」扱いになるのです。
そういったことで普通のよりは大切にすべきであるという意味をこめて、土田浩翔先生は「イーペーコー部分は完成しやすい」としたのではないでしょうか。
ではのはどうかというと、のトイツを薄い壁と考えて、このは「準1・9牌」扱いになります。ただこの場合のは普通のよりは価値が上がりますが、イーペーコーのカンチャン部分に比べると価値が下がることに注意しなくてはいけません。
そして一番注意しなくてはならないのは、これが基本的には3トイツ以下で使うべきシステムである点です。3トイツ以下では、いくら七対子を意識しても面子手と天秤にかける必要があります。その意味では、このイーペーコー部分は最適の形です。
ですから4トイツになり七対子に振り切る場面では、その前のシステム「リャンメン部分がトイツになったら、即リャンメン部分を拒否して隣を捨てる」を使う場面が増えます。
例えば、という同種牌の比較では、「イーペーコー部分は完成しやすい」に従って、切りです。しかしでは、牌のランキングに従って切りです。
カンチャン型のイーペーコーは、孤立の確率がより高まります。よって牌のランキングを一つずらして判断するのが良いでしょう。つまりからは切りですが、からは切りです。
土田システムのⅢとⅣは、矛盾しているように見えます。しかし、そうではありません。それらはトイツの数の違いなどによって、臨機応変に使い分けるべきシステムだったのです。
「土田システム」として書籍に書かれてあるものの解明(?)は以上です。しかし土田浩翔先生は、書籍の別の部分でもトイツができる仕組みについて語っています。そこには「土田システム」以外のことも書かれてあります。その解明は次章にて行います。
トイツ理論の解明
前回挙げた「土田システム」とは別に、土田浩翔先生はトイツ手の特徴として、著書「最強麻雀 土田システム (マイコミ麻雀BOOKS) 」P64に「相似形になりやすい」を挙げています。
具体的には「マイコミ麻雀文庫 土田システム 麻雀が強くなるトイツ理論」のP186に、「並びトイツ」「跳ねトイツ」「二色トイツ」という3つの例を挙げています。
それぞれを1つずつ見ていきましょう。
並びトイツ
まずは「並びトイツ」について、引用させていただきます。
手中にとかのように同色でトイツが並びで入っている場合、その他の色でも同ように並びトイツが生まれやすい・・・この並びトイツはツキが自分から離れはじめた頃に作動しやすい
さぁ、ここから何を読み取ればよいのでしょうか。今まで筋牌の大切さについては、何度も繰り返してきました。そこから逆説的に考えてみましょう。
Aさんが「トイツ系牌効率」にしたがってと筋を固めることに成功したとします。一方Bさんの手にはとあり–を引いてのシュンツ手を考えていました。しかし、・はAさんが固めて持っているので、なかなかシュンツが完成しません。やがてBさんはを引いて、手がとなります。これが並びトイツ発生のメカニズムです。
土田浩翔先生は「並びトイツはツキが自分から離れはじめた頃に作動しやすい」とおっしゃいました。確かにシュンツ手を目指しているBさんにとって、からのツモはツキが離れはじめたと感じさせるに十分でしょう。
さらにAさんは「トイツ系牌効率」で打っているので、他の色でもと筋牌を固めているかもしれません。するとBさんのという手はそこからを引いてシュンツを完成させるのではなく、と並びトイツになる確率の方が高くなり、並びトイツが並びトイツを引き寄せる現象が起こるのです。
つまり「筋トイツ」は積極的に狙いに行っての結果です。しかし「並びトイツ」は場の流れに翻弄されての結果とも言えます。
トイツ系牌効率においては、本来とあればを切るのが手筋です。土田システムにしても同様です。なのでトイツ場に対応できているなら、並びトイツは生まれないはずです。
その意味でも「並びトイツ」が生まれてしまった場合、後手を踏んでいることを自覚しながら別の並びトイツ完成を狙うことでトイツ場に対応する、ということでしょう。(本当か?)
跳ねトイツ
次は「跳ねトイツ」について、引用させていただきます。
手中にとかなどのように三段跳びのような形で生まれるパターンと、単純にとのように違う色でカンチャンターツが生まれるパターンがある。ツキが完全に離れてしまった時間帯におけるトイツ作りには欠かせぬシステム
まずの三段跳びパターンから見ていきましょう。実はこのような形になることは、「トイツ系牌効率」において、そうそうありません。
例えば、となった場合、を重ねなくても・・・を制限するので、切りが手筋です。となった場合も同様に切りが手筋です。
ならは即切るという牌ではありません。しかしからは切りが手筋ですし、からは切り(この場合は切りとの優劣は微妙)です。
よって、やの形が残ることがそもそもないので、トイツ場に対応しているならの形にはなり得ないのです。
つまりこの三段跳びパターンは、トイツ場に対応していたら完成しないわけですから、狙って作るものではありません。
とのパターンについても同様です。
土田システムに「リャンメン部分がトイツになったら、即リャンメン部分を拒否して隣を捨てる」とありましたが、カンチャンも基本的にはそれに準じます。重ねられた際に制限牌がより多くなるように残すのが「トイツ系牌効率」の基本手筋ですので、たとえばとあれば切りになります。
また、重ねられた際に制限牌がより多くなるという意味では、カンチャン部分はリャンメン部分よりは有用です。しかし筋牌ほど有用ではありませんので、たとえばとあれば切りになります。つまりトイツ場に対応できているなら、「跳ねトイツ」を待つ形自体になりにくいのです。
よって仮に偶然が重なってとなったとしても、他色でとある場合の・はすでに切られているはずです。
まとめますと「跳ねトイツ」が完成するということは、偶然かあるいはそのほとんどが手順ミスです。
土田浩翔先生は「ツキが完全に離れてしまった時間帯におけるトイツ作りには欠かせぬシステム」とおっしゃっています。しかしこれは逆説的表現で、「跳ねトイツ」が完成してしまうのは「トイツ場に対応できていない」、もしくは「手順ミスがある」ということです。なので、今の自分にはツキがないと思って慎重になりなさい、とおっしゃっているのです。(知らんけど…)
二色トイツ
最後に「二色トイツ」について、引用させていただきます。
三色同刻の遠い親戚みたいなもので、たとえばと手にあるときとあればやもトイツになりやすいオカルトっぽい原理・・・上昇気流に乗っているときのトイツ手に出現しやすい
自分でオカルトって言っていますが、これは今までのものと比べて論理的な説明がしやすいです。
たとえば自分の手にとある場合、相対的に他家の手にはそれらの牌は少なくなります。すると他家の手づくりは~・~を使ったものが多くなります。シュンツで考えると「456」「567」「678」「789」の四種類しかありません。なので自然と二色のシュンツ構成が、似たものになりがちです。そうなれば狙われやすい役の1つに「三色同順」があるでしょう。
さらに自分の手にがあれば、他家の三色同順はさらに絞られて、自然と「456」「567」「678」に狙いが定められます。するとやは必要ありませんから、他家から切られやすい牌になります。結果としてやは、場に出ていなければ山にあると読めるのです。
さらに言えば同様の理屈で、自分の手にとあれば(・も)も読みやすい牌になります。土田浩翔先生がおっしゃる「相似形になりやすい」はこういう点でも当てはまるのです。
また「二色トイツ」は、相手に三色同順を狙わせることで他家の手を制限します。すると他家の手の進みを遅らせることにもなります。
「上昇気流に乗っているときのトイツ手に出現しやすい」と土田浩翔先生はおっしゃっています。この意図は、これは「二色トイツ」があることで山にあるかどうか読みやすい牌ができるし、トイツ手にとって有利な遅い展開になる可能性が高いため、自分が上昇気流にあると思ってあせらずじっくり行けばよいということなのです。(たぶん…ね)
スジ対子理論・スジ対子ランキング
土田浩翔先生は、You tube において、スジ対子理論としてスジ対子ランキングを発表しておられます。あるトイツがあったとき、そのスジ牌のツモりやすさのランキングです。
この土田浩翔先生がおっしゃるスジ対子ランキングは、果たして本当に正しいのでしょうか。「トイツ系牌効率」視点から考察してみましょう。
Aランク
/
土田浩翔先生は、この形をAランクとしています。しかし、44のトイツがあるときの1、66のトイツがあるときの9は、スライドが起こりづらいです。つまり場に放たれにくくなるため、山読みがしづらい牌です。したがって「トイツ系牌効率」的には、1-44と66-9はDランクです。
Bランク
/ / /
土田浩翔先生は、この形をBランクとしています。しかし、「2・5・8牌」は筋で重ねても、「3-6」や「4-7」と比べて制限する牌種が少ないです。そのためやや価値が低くなります。「トイツ系牌効率」的には、22-5・55-2・55-8・5-88はCランクです。
Cランク
/ / /
土田浩翔先生は「4・6牌」は優しいため、引力が弱いとおっしゃっています。しかし「トイツ系牌効率」的には、33-6と4-77はAランクです。
まず33や77がトイツの時点で、すでに制限牌を2種類も作ることができています。さらに「33-66」「44-77」という相手の手を最も制限する形を狙えるからです。
それに対して11-4と6-99は、11と99のトイツが制限牌を作りません。スジ牌を重ねられれば制限牌を作れますが、それは「3・7牌」なら単独でできます。そのため「トイツ系牌効率」的には、11-4と6-99は最低ランクのEランクとなります。
Dランク
/
土田浩翔先生は、4がトイツのときの7と、6がトイツの時の3は、なかなかくっついてくれないとおっしゃいます。もちろん7と3は尖張牌といって、両面・片チャン・間チャン待ちのいずれにも関係する牌です。なので場に放たれづらく、山読みがしにくい牌です。そのため最終的な待ち牌にするのは、あまりよろしくありません。
ですが「トイツ系牌効率」的には、44-77や33-66という相手の手を最も制限する形を狙えるため、ランクは上がります。ただ、44と66自体は制限する牌がありません。その分を差し引いて、「トイツ系牌効率」的には、44-7と3-66はBランクとします。
スジ対子理論まとめ
土田浩翔先生のランクと「トイツ系牌効率」のランクが、全く違ってしまいました。これはどちらかが間違っているということでしょうか。いえ、そんなことはありません。土田浩翔先生はおそらく、イーシャンテン時や聴牌時の待ち選択に、このランクを適用させようとしておられます。
それに対して「トイツ系牌効率」では、上記で説明した内容は4トイツまでです。イーシャンテン以降の牌選択は、基本は1・9字牌で、それが足りなければ2・8牌で代用するという考えです。
それを踏まえて土田浩翔先生のランクを見てみると、待ち牌が「1・9>2・5・8>4・6>3・7」となっています。「5」は赤牌があるのでランクを上げたと考えると、通る道筋は違えど結論は同じになるのです。新幹線を使おうが飛行機を使おうが、大阪から東京へ行くことができるのと同じことです。
スジ対子理論実戦譜 最強星人位決定戦
どん兵衛 presents 最強星人位決定戦から、土田浩翔先生によるスジトイツに関する実戦譜を拝見しましょう。
東3局 ドラ 北家 土田浩翔(対子星人) 30,800点
ツモ 打
捨て牌
北家の土田浩翔先生は、6巡目にチートイツを聴牌しました。1巡目にを切っていますので、その外側ので待つというのも面白いです。しかし捨て牌がいかにもチートイツです。なのでリーチしても、必ずしも出やすい待ちとは言えないでしょう。
対しては一枚切れの字牌でした。そのため山に2枚はいると予想されます。そこでリーチをして、ツモっての跳満を狙う手もあります。しかし土田浩翔先生はリーチをせず、単騎のダマに構えました。トップ目ですし、ドラドラありますから、ダマでこっそり待つのも自然な選択です。
西家の多井は、その2巡後にをつかみます。自分ですでに切っていますので、不要牌です。捨てられるかと思いましたが、多井はそれを手に残しました。おそらくこれは土田浩翔先生ではなく、その時2つ晒していた親の日吉を警戒してのものだと思われます。これは土田浩翔先生にとっては不運でした。
そうこうするうちに南家の猿川から、リーチがかかりました。そして土田浩翔先生のツモが、現局面です。
東3局 ドラ
東家 日吉辰哉(絶叫星人) 16,300点
西家 多井隆晴(麻雀星人) 29,200点
南家 猿川真寿(猿の惑星人) 23,700点
北家 土田浩翔(対子星人) 30,800点
ツモ
さぁ、どうしましょう。猿川は打の後に、安全牌になりそうな牌をツモ切ったうえで、切りのリーチです。するとをまたぐ–待ちはなさそうです。あるとすると–待ちですが、自分からは3枚見えですから、ワンチャンスになります。
個人的にはを切って単騎ダマ続行かと考えていました。解説の松本吉弘は「ここで(ツモ切り)追いかけリーチもあるか?」と言っていました。しかし土田浩翔先生の選択は、なんとを切っての単騎リーチでした。
局後の土田浩翔先生のインタビューでは、「がトイツなので、その引力でが引けるかな、と思った」とのことです。その結果はこうなりました。
東3局 ドラ 裏ドラ
東家 日吉辰哉(絶叫星人) 16,300点
西家 多井隆晴(麻雀星人) 29,200点
南家 猿川真寿(猿の惑星人) 23,700点
北家 土田浩翔(対子星人) 30,800点
ツモ
結果はで、猿川への放銃です。裏ドラも2枚のって、満貫の放銃となりました。痛すぎます。ですが、そりゃそうなるだろうという感じです。いかにもチートイツっぽい捨て牌で中張牌待ちは、チートイツ迷彩の一つの方法ではあります。しかし、今回は先行リーチがありますから、それは意味を成しません。
もう一つこのケースでは、大きなポイントがあります。局後のインタビューで、「がトイツなので、その引力でが引けるかな、と思った」と土田浩翔先生がおっしゃったことです。
土田さぁ~ん、自分ではCランクと言っていますよねぇ。しかもこの場合が3枚見えていますので、その引力が遮断されているじゃないですか。もう一巡待っていたら、をツモっています。ならBランクです。こちらの方がランクが上です。
またを猿川は切っていますので「–」の両面待ちはありません。しかし「–」の両面待ちについては完全なる無筋。自分の目から見てが1枚しか見えていませんし、自分がをトイツで持っていることから、「–」の両面待ちは無茶苦茶ありそうなところです。
結果的にはは通りましたが、この牌は切れないと考えて、単騎でリーチと行くのは有力です。結果論ですが、これなら猿川からの出和了になっています。
まぁさすがの土田浩翔先生も、たまにはこういうことがあるってことでしょう。
オカルト的スジトイツ論
さらに土田浩翔先生は、コラム中の「オカルト的スジトイツ論」として、「遠い筋は重ならない」と「スジ対子3組目は当てにしないほうがいい」をあげています。
前者の「遠い筋は重ならない」は前に解説しましたので、ここでは後者の「スジ対子3組目は当てにしないほうがいい」を考察します。
スジ対子3組目は当てにしない方がいい
これは実際に牌姿を見るとわかります。スジ対子が2組完成されていて、3組目を狙おうかという牌姿は、このようなものです。
ツモ
「スジ対子3組目は当てにしない」というより、その状況はもはや5トイツ、七対子一向聴です。七対子一向聴なら3種類しか牌を持てません。ならそこには、ツモりやすい牌を選ぶべきです。
土田浩翔先生は「手牌にあるトイツのスジ牌が重なる」と言いました。しかし何度も言うようにこれは、トイツ場を予測するために筋牌を大切にすることの逆説的表現です。そしてそれは自分の手の中にスジトイツが2組ある時点で十分です。
つまり上記の手牌なら、トイツのの筋になっていますが、を切って山読みがしやすいを残します。
一向聴時点では、山読みがしやすい牌を残すべきということを踏まえて、「スジ対子3組目は当てにしないほうがいい」と、土田浩翔先生はおっしゃっている(かもしれない)のです。
システムで作り出すトイツ
さらに土田浩翔先生は「システムで作り出すトイツ」にて、5つのシステムをあげています。
Ⅰ・筋トイツは残します
Ⅱ・自分が河に切っている牌の筋は切ります
Ⅲ・トイツの隣は切ります
Ⅳ・3・7から切ります
Ⅴ・1枚切れの1・9字牌は残します
このうちⅠとⅢはすでに解説しました。残るⅡ「自分が河に切っている牌の筋は切ります」とⅣ「3・7から切ります」、Ⅴ「1枚切れの1・9字牌は残します」を考察しましょう。
自分が河に切っている牌の筋は切る
このシステムは、Ⅰ・「筋トイツは残します」との対比になっています。つまり自分の手の中にあるトイツの筋牌は残します。しかし捨てた牌が被ってしまったとき、その筋牌は捨てましょう、ということです。
自分の手にあるトイツの筋牌と、河にあるトイツの筋牌は何が違うのでしょうか。自分の目から見るとどちらも同じように思えます。ですが他家の立場に立って考えると、その二つは全く違います。
自分の手にあるトイツの筋牌を切っても、他家には何も伝わりません。しかし河にあるトイツの筋牌を切ると、その部分を待ちにするリャンメンターツの価値が下がります。そしてトイツ場傾向が、他家に伝わるのです。
つまり「自分が河に切っている牌の筋は切ります」というシステムは、「捨て牌でトイツ場を演出しましょう」と同義です。すると行動としては、「自分が河に切っている牌の筋を切る」だけではなく、他家の捨て牌に合わせることや、その筋牌を切ることも含まれるでしょう。
さてトイツ場傾向を河で演出することで、何が起こるのでしょうか。そもそもその場がトイツ場であるなら、何も変わりません。そのトイツ場傾向が、そのまま河にあらわれただけですから。
ですがその場が混合場やシュンツ場だったとしたら、河のトイツ場傾向によって、他家はいつもと違う行動をとるかもしれません。例えばリャンメンターツに固定するところを複合形で持ち続けたり、ポンで仕掛けたりです。
その結果として以前述べたように、混合場やシュンツ場だったものが、トイツ場へと人為的に変わる可能性があります。これは七対子を考えている自分にとってはいい傾向です。手と場が一致するからです。
まとめるとこれは、「自分が河に切っている牌の筋は切る」ことによってトイツ場傾向を演出し、七対子に有利な場を作り出すシステムなのです。(たぶんね)
3・7牌から切る
「3・7牌から切る」と言われても、ここだけではなかなか意図がわかりません。もう少し引用させていただきましょう。
3・7から切ります。3・7の孤立牌があったら、そこから切ります。3・7はシュンツ手のキー牌ですから、トイツ手にとっては筋トイツでない限り無縁です。ただし、調子が悪いときは、シュンツ手の時と同様に逆流打法で3・7を残します。
まず大前提として、「3・7牌」は手の中に使われやすい牌です。なので山読みがしづらく、七対子の待ち牌としては不向きです。トイツ手を狙うなら、土田浩翔先生が「3・7牌から切る」とおっしゃるのは、至極当然です。
ですがそれは承知で、これまで私は3・7牌の重要性を述べてきました。トイツ系牌効率において3・7牌こそ残すべきと主張してきたのです。それとこの土田浩翔先生の話は真逆です。さてどちらが正しいのでしょうか。
実は3・7牌を残すか残さないかは、役牌の先切りと同じ感覚です。配牌に役牌の孤立牌があるとします。その役牌は自分の手が良いときは、他家に重ねられる前に切ります。自分の手が悪いときは、他家の手を進めないよう絞ります。
3・7牌もそうです。自分が七対子に進めそうなら、他家に鳴かれる前に切ります。自分が苦労しそうなら、3・7牌を押さえて、できることなら重ねてしまうことで、他家の手を進めないようにするのです。
すると、このトイツ系牌効率と土田浩翔先生の話とは、完全に整合性が取れます。前章で述べたように、そもそも私の言うトイツ系牌効率は「諦めの牌効率」です。土田浩翔先生も調子が悪いときは3・7牌は残すとおっしゃっています。トイツ系牌効率は、土田浩翔先生が言うところの「調子が悪いとき」の牌効率なのです。
さて、以前解説した「孤立牌ランキング」です。
先程の話を踏まえると、「トイツ系牌効率の孤立牌ランク」が、土田浩翔先生の「ツキの無いときのランキング」と同じになるのも理解できます。土田浩翔先生は「調子が悪い」「ツキがない」といいますが、その真意は局面の判断です。行くべきか、引くべきか。その「引くべき」を「調子が悪い」「ツキがない」とおっしゃっています。
言い換えるなら、トイツ系牌効率の「3・7牌残し」は受けの七対子で、土田浩翔先生が言う「3・7牌から切る」は、攻めの七対子です。コインの裏表の関係なのです。
1枚切れの1・9字牌は残す
これは分かりやすいですね。統計にあったように、1枚切れの1・9字牌は山読みがしやすい牌です。特に中盤以降は意識しておくべきです。
しかし、土田浩翔先生はコラム中の「字牌への依存度を下げる」にて、次のようにもおっしゃっています。
字牌への依存度を下げる
字牌を頼りにしすぎないということも七対子づくりではとても大事です。七対子のサンシャンテン、つまり3トイツのときには、字牌は4種類まで持っていてもいいです。リャンシャンテンになったら3種類以下、イーシャンテンになったら2種類以下まで持っていていいです。イーシャンテンになって字牌、字牌、字牌と持っている人がいますが、これはナンセンスです。七対子づくりではもっと数字の牌を活躍させてください。
これはどういうことなのでしょうか。別に「字牌、字牌、字牌」のイーシャンテンでもいいではないでしょうか。実際この字牌三頭立ての七対子イーシャンテンは「ヒサトイツ」として、佐々木寿人プロの得意技です。
ですが土田浩翔先生の言葉には、やはり深い意図があります。字牌三頭立ての七対子イーシャンテンは確かに山読みもしやすい良い形です。ですが終盤にもなると、同じように山読みのしやすい数牌も出てきます。
七対子バレバレの字牌待ちと、山に残っていそうな数牌待ち。どちらが良いでしょうか。ツモに関しては同じです。ですが数牌待ちの方は七対子の盲点になって、出和了の可能性もあります。機械的に字牌を残すのではなく、「しっかり河を見て、山に残っていそうな牌を探す努力を怠ってはいけませんよ」という、戒めなのですね。
また最終的に字牌待ちにするにしても、リーチ宣言牌が数牌だと、捨て牌の印象が変わります。宣言牌が字牌だと、待ち牌はその字牌よりもよい単騎待ちだろうと推測されます。そして出和了が期待できなくなります。
ですが、リーチ宣言牌が数牌だと、待ち牌が絞りづらくなります。またチートイツっぽい河であっても、数牌切りリーチなら、「なぜチートイツにそんな牌を残していたのか?」とチートイツそのものへの疑念を抱かせる可能性もあります。
「イーシャンテンで、字牌、字牌、字牌はナンセンス」というのは、そういった様々な含みを持たせた深い言葉なのですね。
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