出和了目的七対子(チートイツ)
これまで語ってきたチートイツの戦略は、リーチ+ツモ和了を目的とした戦略でした。というのもチートイツの得点的な特徴のためです。
2翻 1600 / 3翻 3200 / 4翻 6400 / 5翻 8000 / 6翻 12000 / 7翻 12000 / 8翻 16000
それぞれの点差で考えると、次のことが言えます。
2翻→3翻(+1600)/ 4翻→5翻(+1600)/ 6翻→7翻(+0)は、さほどうれしくない。
3翻→4翻(+3200)/ 5翻→6翻(+4000)/ 7翻→8翻(+4000)は、結構うれしい。
そこで赤牌の存在です。赤牌はマンズ・ソウズ・ピンズの各種「5牌」に一つずつ存在するのが基本ですが、上記のことから、赤牌を含むトイツが1組手に存在していても、それだけではチートイツとしては「さほどうれしくない」です。
ですが、手牌に赤牌を含むトイツが1組あるときリーチをすれば、「リーチチートイツ赤」で4翻となり、「結構うれしい」のルートに乗せられます。
しかし、リーチは聴牌を知らせる行為です。それにより和了率が下がることが懸念点です。赤牌がない場合は、待ち牌に山に多くある牌を選ぶことと、相手を降ろすことにより、その和了率の低下をツモ率を上げることで相殺し、「結構うれしい」のルートに乗せようとします。
赤牌がある場合は、そのツモ率を上げることが「さほどうれしくない」ため、和了率の低下がそのままデメリットになります。そこで迷彩をほどこし、いかに和了率を上げるかという「出和了目的」の戦略が必要になります。
つまり赤牌を手の内で使うことを前提とする戦略とは、出和了を主目的とした戦略になるのです。(強引?)
七対子(チートイツ)中張牌タンキリーチ
ではここで「リスキーエッジ(ロバート編)」より、出和了目的の七対子(チートイツ)の例をを見てみましょう。(※以下ネタバレ注意)
南4局 ドラ 吉岡 -13.1
(リーチ)
主人公の吉岡は、こんな捨て牌でリーチします。中張牌→老頭・字牌と、捨て牌がいかにも七対子(チートイツ)ですね。第一打にドラ表示牌のを打っているのも、七対子の可能性を後押しします。
ちなみにこのときは、ロバートがマンズ、目黒がソウズのホンイツをそれぞれ狙っていて、字牌が高い展開になっています。
はソウズのホンイツを狙っていた目黒によって、聴牌したときに切り出され、吉岡がそれに合わせ打ちしたものです。は場況を考えると、ロンの声がかかっても不思議ではないくらい、相当厳しい牌になります。
そのときのロバートの手牌がこちら
吉岡のリーチの当たり牌をと読んだロバートは、ここからリーチ宣言牌のをポンしを切ります。しかし、吉岡の手牌はこうでした。
ロン「」
吉岡はこう言います。
は100%出て来ない牌だが、マンズなら出る可能性はあるだろ、
おまえの手牌は字牌とマンズだ
おまえならマンズでもむしろ真ん中の牌を自信を持って打つだろ
しかしまさか・・・すぐにが出るとはな(ニヤリ)
そして心の声がそれに続きます
であがれたのは偶然かもしれない・・・(以下略)
七対子(チートイツ)の待ちとなるのは、通常以下の三パターンです。
「山に残っていそうな牌(1枚切れ字牌など)」
「出易そうな牌(字牌・端牌・筋牌など)」
「切りづらい牌(ドラ牌など)」
今回のケースは少し特殊で「中」や「發」が「切りづらい牌」になっていましたが、七対子(チートイツ)といえば、待ちはこの三パターンが多いです。
そこで吉岡は逆転の発想で、通常のリーチでは出難い「中張牌」を、むしろ七対子(チートイツ)リーチであれば出易い牌であろうと考えたのです。
この「いかにも七対子(チートイツ)の捨て牌リーチ&中張牌待ち」は出和了目的七対子(チートイツ)(迷彩七対子(チートイツ))における常套手段の1つです。しかし、これにはいろいろなリスクがあることを忘れてはなりません。
まず相手が捨て牌を見て「七対子(チートイツ)」であると見抜いてくれる、雀力の持ち主でなくては意味がありません。
また実際に捨て牌が、いかにも「七対子(チートイツ)」であることが必要です。これは案外難しく、普通にすすめていて、途中から七対子(チートイツ)へ方針転換することもあるでしょう。また少々七対子(チートイツ)ぽいあやしい捨て牌であったとしても、やはり中張牌は通常手も警戒して切られないのが普通でしょう。
さらにそのリーチを無視して攻められると、これは厳しいです。
先ほどの例で言えば、ロバートはここからを切りましたが、ゼンツッパであれば切りです。そうすれば「」待ちとなり、ロバートの勝ちだったでしょう。
つまり中張牌は相手の手牌に組み込まれていることが多いので、当たり牌として引き出すにはかなりハードルが高い牌といえます。吉岡の心の声である「であがれたのは偶然かもしれない・・・」はそれを含めたものだったのかもしれません。
まとめますと、こうなります。
出和了り目的七対子(チートイツ)の「中張牌」待ちは、
・自分が対戦相手を認める。
・そして対戦相手に自分が認められる。
・捨て牌がいかにも七対子(チートイツ)である。
以上によってなされる三位一体の合同芸術です。
決めることは難しいですが、決まれば相当格好いいのは間違いありません。ぜひ決めてみたいものです。
ということで今後しばらくは、出和了目的七対子(チートイツ)、つまり迷彩について考察していきます。で、次回の考察はもう少し軽いところから、「筋ひっかけリーチ」あたりからやってみようと思います。
七対子(チートイツ)筋ひっかけリーチ「端牌筋待ち」
七対子(チートイツ)の筋ひっかけについて考えてみましょう。筋ひっかけにも種類がありますが、今回は「端牌筋待ち」についての考察です。
「端牌筋待ち」4を切って1待ち、6を切って9待ち。これについて考えてみます。
端的に言えば「端牌筋待ち」はとてもよい待ちです。両面待ち・カンチャン待ち・ペンチャン待ちが否定されますので、可能性としてはシャンポンと単騎待ちしかありません。捨て牌が七対子(チートイツ)らしくなければかなり有効な待ちでしょう。
ただ、「端牌筋待ち」のひっかけ待ちを狙って作るのは、とても難しいのも事実です。まず捨て牌が七対子(チートイツ)らしくない、ことが前提です。
七対子(チートイツ)らしくない捨て牌とは、序盤に1・9字牌が切れているものです。七対子(チートイツ)において字牌は急所ですから、それをおいそれと切るわけにはいきません。となると1・9牌で、捨て牌の七対子(チートイツ)らしさを消す必要があります。するといざ聴牌したときには「端牌筋待ち」の筋ひっかけにするための1・9牌がすでに河に捨てられていることが多くなるわけです。
かといって1・9牌を待ちにするためにそれを温存すると、捨て牌がいかにも七対子っぽくなってしまうので、逆に「端牌筋待ち」のひっかけを警戒されることになります。あちらを立てればこちらが立たず、というやつですね。しらんけど。
捨て牌がいかにも七対子(チートイツ)であれば、それは残念ながらひっかけにはなりません。とはいえ1・9牌自体は山読みしやすい牌ですから、山にあると踏んでのリーチはあり得ます。ただ、出あがり期待のリーチにはなり得ないということです。単なる七対子(チートイツ)のリーチということですね。
例を探したけれど、よいのが見つからなかった・・・ので過去の牌譜より。
これ単騎待ちにしたけれど、単騎待ちリーチとしてもひっかけにはならないよね・・・という話。
捨て牌が七対子(チートイツ)らしくなければ、これは大チャンスです。自分の幸運をかみしめつつ自信を持ってリーチと行くのがよいでしょう。ただ、これを狙って作るのは難しいんじゃないかな。
仮に配牌に老頭牌・字牌が多くあれば、自然な捨て牌で七対子(チートイツ)が狙える・・・っていうか、そんな配牌なら国士をねらうかなぁ。
ということで七対子(チートイツ)ひっかけリーチの考察。次回は「中張牌筋待ち」です。
七対子(チートイツ)筋ひっかけリーチ「中張牌筋待ち」
引き続き七対子(チートイツ)の筋ひっかけについてです。前回「端牌筋待ち」を考察しましたので、次は「中張牌筋待ち」です。
「中張牌筋待ち」4を切って7待ち、6を切って3待ち、5を切って2あるいは8待ち。これについて考えてみます。
結論から言いますと、これはそれほどよくない待ちだと考えます。
まず自分の捨て牌が七対子(チートイツ)全開だった場合、筋ひっかけは警戒されるところです。捨て牌から七対子(チートイツ)臭さをうまく消すことができていたとしても、今度はからの切りでカンチャン待ちというパターンがありますので警戒されてしまいます。リーチ宣言牌がそれだとなおさらですね。
また切られる位置がリーチ宣言牌から遠ければ遠いほど、そのリャンカンパターンの警戒が薄れます。しかしリーチ宣言牌から遠いということは、序盤に切られるということです。それは捨て牌がいかにも七対子(チートイツ)ということになりそうです。あちらを立てればこちらが立たず、というやつです・・・これ前回もやりましたね。
特に他家の河にがすでに捨てられていた場合は、ますますよろしくありません。を狙ってののカンチャン待ちの可能性がなくなるからです。相対的に待ちの警戒は強まるでしょう。
また別の理由からも、この待ちを避けるべきだと言えます。を切ってひっかけ待ちとなる、あるいはを切ってひっかけ待ちとなるという牌は、尖張牌という通常のメンツ構成において、キーになる牌です。ということは攻め返された場合においても、そう簡単に出る牌ではありません。
前章で「ブラコン女子大生の最短で強くなる麻雀」P81に「生牌3・7牌(筋待ち)」はリーチとありましたが、1枚切れだとその基準から外れていました。つまり出和了に対して、過大な期待はしていないと思われます。
受けのチートイツである「トイツ系牌効率」であるなら、なおさら慎重であるべきでしょう。
しかしを切ってのあるいは待ちに関しては、一点だけ有効な待ちになりえる場合があります。それはを切ってのスジ待ちです。ただ、これは赤牌をつかった迷彩として別に扱うべきものですので、今回は深くは考察しません。
赤に関係しない「中張牌筋待ち」のひっかけ待ちは、それほど効果的でないと結論づけて、今回は終わりにしておきましょう。
ということで七対子(チートイツ)ひっかけリーチの考察。次回は「中筋待ち」です。
七対子(チートイツ)筋ひっかけリーチ「中筋待ち」
今回も七対子(チートイツ)の筋ひっかけについてです。最後に「中筋待ち」を考察します。
「中筋待ち」1と7を切って4待ち。2と8を切って5待ち。3と9を切って6待ち。これについて考えてみます。
たとえば「」とあった場合、で面子をつくるため通常はを切って「」と構えます。ここからカンチャン待ちにするならを切ってと待ちにするでしょう。なぜなら「」からを切っての待ちとした場合そのは「–」の両面待ちが否定されていないただの待ちですが、を切っての待ちなら捨て牌にとがあり中筋待ちになるからです。
しかし逆に考えるとそのようなパターンがあるということは、 → の順で切られた場合はカンチャン待ちの可能性があるということですから、ひっかけ待ちとしてはそれほど効果が見込めませんね。また、今はに関係した流れでしたが、それが普通のであったとしても同様の流れになることが多いでしょう。
ただ「」とあった場合、両面待ちへの変化を考え、を切ってとすることもありますので、中筋待ちの警戒は少し薄れるかもしれません。
また「」とあった場合、を切って「」と構えることもあります。このときはその後を切ってとカンチャン待ちにするでしょう。
まずという牌自体が切られやすい。そしてを切っているので、両面待ちの可能性を消している。その2つの利点があります。
そもそも「」からを切るということは、その時点ですでに最終的にはとカンチャン待ちにしようという意図があります。ということは → と切ってのカンチャン待ちは考えにくいと言えます。同じとが切られてある河であっても、その順序が大切なのです。
またとを比べると山にあるかどうかを読みやすいのは当然です。その点でも、七対子(チートイツ)を狙う上で切られる順序は → となることが多いです。
ではその時を持っていた場合を待ちにすればよいのでしょうか。当然そんなわけはなく、とが手にあった場合、を切って待ちであるいわゆる「端牌筋待ち」にすればよいのですから、わざわざを切って他家に使われやすいを待ちにするのはあまり効率的ではありません。
→ と切って待ちにするのはひっかけ待ちとしてはよいですが、それで和了率が上がっているのかというと疑問です。
えっと・・・これですべての筋ひっかけのパターンは書いたかな? まとめますと、
「端牌筋待ち」のひっかけ待ちはいいね。でもできるの?
「中張牌筋待ち」のひっかけ待ちはいまいちだね。うん、いまいち。
「中筋待ち」のひっかけ待ちは微妙・・・。わざわざやんないわー。
ということで七対子(チートイツ)ひっかけリーチの考察ですが、次回は赤牌がらみのひっかけ待ちについてです。
赤牌を使った七対子(チートイツ)迷彩
七対子(チートイツ)の赤牌を使った迷彩について考察します。が切られることによって否定される待ちにはどういうものがあるのでしょうか?
まず赤牌に限らず、「5」という数字が切られることによって、否定される待ちが2パターンあります。
まずを切って–や–の筋の両面待ちは、振聴になりますので、否定されます。
もう1つはからを切っての「カンチャン待ち」、からを切っての「カンチャン待ち」です。これは両面待ちからカンチャン待ちと、待ちが減りますので、手役に関係しないならまずありえません。切られるのがならなおさらです。
次は赤牌だからこそ否定されるパターン3つです。
まずは両面待ちからです。これをAパターンとします。
からを切っての「–両面待ち」、から切っての「–両面待ち」は可能性が低いです。手牌の中に普通のがあるのに、わざわざ1翻つくを捨てる理由がないからです。
次はカンチャン待ちです。これをBパターンとします。
からを切っての「カンチャン待ち」、からを切っての「カンチャン待ち」 も上記と同ように可能性が低いです。
次もカンチャン待ちですが、Cパターンとします。
からを切っての「カンチャン待ち」
からを切っての「カンチャン待ち」 は、そのが捨てられたのが序盤である(リーチから離れている)なら可能性が低いです。
ただ、そのがリーチ宣言牌(あるいはそれに準ずる牌)であるなら話は別で、もしくはのカンチャン待ちは十分あり得ます。の待ちと、の待ちとでは、待ちの方が両面待ちが否定されている点と、自体の使い勝手の悪さからが場に放たれやすくなるからです。つまり点数よりも和了が重視される場面では、リーチ宣言牌がでは・待ちは否定されるとは言えないのです。
そしてこれは多かれ少なかれ、Aパターン・Bパターンにも当てはまります。つまり上記の待ちが否定される理由を逆に利用して、出和了の可能性を高めようという考え方があるため、がリーチ宣言牌(あるいはそれに準ずる牌)であるときは、上記のパターンが否定される可能性が下がるのです。
ということは七対子(チートイツ)のリーチでを使った迷彩を考えるなら、は早期に捨てた方がよいことになります。
次は逆にが切られたからといって、否定されない待ちです。
からを切っての「–の両面待ち」、からを切っての「–の両面待ち」。これは待ちの枚数が増えますのであり得ます。
序盤であっても他に余剰牌がなければ、が切られることも多いでしょう。もちろんとともにが捨てられていればは否定されますし、とともにが捨てられていればは否定されます。
まとめますと、赤牌を捨てることによって否定される度合いが強いものから、「3・7 > 2・8 > 4・6 > 1・9」になります。
ただ、実際には「3・7牌」は面子に組み込まれる可能性が高い牌です。よって、赤5を切っての七対子(チートイツ)の待ちとしてよい順番は、「2・8≧3・7>4・6>1・9」となるでしょうか。
そしてそれは赤牌を早く捨てることによりさらに強まります。トイツ系牌効率においては、「5」自体が重ねづらく、トイツ場傾向の把握がしづらいですから、早く切りたい牌になります。赤牌であっても同じです。
ただ思い返せば、迷彩をほどこしてチートイツの出和了率をあげようとするそもそもの目的は、赤牌を含むトイツが手の中にあり、出和了でも「3翻→4翻(+3200) / 5翻→6翻(+4000) / 7翻→8翻(+4000)」という、「結構うれしい」ルートにのるからです。
すると赤牌が一つ手の中にあった場合、それを切って出和了率をあげようとすると、上記の「結構うれしいルート」にのせることができません。かといってそれを手の中で重ねられたとしても、赤牌を使った迷彩はできないのです。彼方立てれば此方が立たぬという感じです。
ただこういうパターンがあります。
すでに一組赤牌含みのトイツがある状態での赤牌切り。狙いはもちろん「」待ち単騎リーチです。これなら「結構うれしいルート」にのったまま、出和了率を上げることができます。ここからさらに「5」を重ねようとするより、出和了でもウラウラでの跳満の方が期待できそうです。
とはいえ、これはなかなかのレアケース。ぽつんと1つある赤牌は重なればラッキーくらいで持っていて、他家が1枚捨てたら、それに合わせ打ちするくらいの気持ちでいいのではないかと思います。
赤牌を使っての迷彩は、和了ることが大事な場面ならありますが、それにしてもダマにして字牌待ちの方がいいかもしれません。なかなか使いどころが難しいですね。
壁を使った七対子(チートイツ)迷彩
壁を使った七対子(チートイツ)迷彩についてみていきましょう。
4枚見え牌(壁)の外側、たとえば「」がポンされていて、さらにが1枚河に捨てられている状況のはオタ風牌と同じ価値になります。という順子の可能性がなくなり、同種牌を3枚集めないと面子にならないからです。つまり4枚壁の外側リーチは狙い目です。出和了目的としては十分です。
ただ、4枚壁の外側牌は手牌だけで考えるとオタ風牌と同価値ではありますが、その壁が他家に認識されていなければ状況は変わります。こちらの手は七対子(チートイツ)ですから、状況としてはこのような感じです。
手牌「」 河にが2枚切られている。
となれば他家のというカンチャンは完成しませんので、は確かに切られやすいです。しかし、それは他の部分が完成しての話です。が4枚見えない限りは順子完成の可能性を考えては残されることもあります。つまりその時点では、山にあるかどうかが読みづらい牌なのです。
また他家にとってみればは2枚壁ですから薄いです。リーチされた状況で、が2枚壁を理由に切られることはあまりないでしょう。諸々考えるとこれでリーチは虫が良すぎるかもしれません。ということで、出和了目的七対子(チートイツ)リーチは、最低でも3枚壁が全員に見えていることが必要条件ではないかと思われます。
また、壁の存在を他家に認識させなくてはならないということから、からはを切るという、ペンチャン待ちは内側から切るという戦術が考えられます。
七対子(チートイツ)はどうしても牌の被りという不運とは、切っても切り離せない関係です。仮にからを切って、そのが被ってしまった場合、手牌にあるは普通の数牌です。しかしからを切って、そのが被った場合、手牌にあるは2枚壁の外側牌になります。2枚壁だとそれほど効果はありませんが、そこから他家が1枚でもを切ると3枚壁となり、ある程度の効果は見られるでしょう。
またペンチャン待ちは内側から切るという戦術は、山読みのしやすさが「1・9牌」>「2・8牌」となることとも親和性が高いです。特に終盤はその傾向が強くなりますので、さらに有効だと思われます。
しかしこの戦術は「七対子初期での「1・9牌」「2・8牌」」で語られたペンチャン落としの手順 → とは逆になります。矛盾しているようにも思えます。しかし先ほど少し触れましたが、これは時期の問題なのです。
自分の手牌を目安に考えると、七対子初期(0~2トイツ)では → と外側から切り、七対子中期(4トイツ)以降では → と内側から切ります。また巡目を目安に考えると、序盤(0~6巡目)では → と外側から切り、終盤(13巡目~)以降では → と内側から切ることになります。
とはいえ、これはが1枚も場に見えていない状況での話ですので、実際は状況に対応していくことになります。具体的には合わせ打ちです。特に「2・8牌」は優先的に合わせ打ちします。その結果として壁が作られ「1・9牌」が狙い目になれば狙ってみてもよいでしょう。
しかし現実には壁を作って、その外側を狙う状況を作り出すのは難しいと思われます。まずこちらが「2・8牌」を切ったからといって、他家はそれに合わせてきません。字牌ならまだしも「2・8牌」の合わせ打ちはないものと考えた方がいいでしょう。
では逆に相手が切った「2・8牌」にこちらが合わせる場合ですが、面子手であればトイツ落としのように2枚切ることができます。しかしこちらの狙いが七対子(チートイツ)である以上、狙って合わせられるのは1枚しかありません。自分の被りか他家の捨て牌か、いずれにせよ偶然に頼らないと、出和了目的七対子(チートイツ)リーチの最低基準である3枚壁には届きません。
ただ狙って壁を作り出す方法ががないことはありません。それは次回考察します。
まとめますとこうなります。
壁の外側七対子(チートイツ)リーチは、壁の存在を他家に認識させないといけないよ。でも狙ってその状況を作るのは難しいよね。たまたまそういう状況になったら、リーチしてもいいんじゃないかな。
狙って壁を作り出す方法
狙って壁を作り出して、それを使って出和了を狙う方法を考えてみましょう。前章でこのように書きました。
「壁の外側七対子(チートイツ)リーチは、壁の存在を他家に認識させないといけないよ。でも狙ってその状況を作るのは難しいよね。」
またなぜ難しいのかという理由も書きました。難しいなら諦めよう…なら何のための七対子(チートイツ)研究(?)なのか。為せば成る、為さねば成らぬ何事も、成らぬは人の為さぬなりけり。ということで、「狙って壁を作り出す方法」を編み出してみました。
では発表します。狙って壁を作り出すその方法は・・・「誰かのリーチ後に危険牌を切る!」です。
・・・正気ですよ。では、具体的に見てみましょう。
親である下家から、リーチがかかりました。対面・上家は親の現物を切って、降りている模様です。そして私の手番になりました。
手牌は「」 ツモ「」 ドラ「」です。
は現物では1枚切れのオタ風牌。は場に見えていませんが、おそらく通るだろうという状況。普通なら現状維持ののツモ切りでしょう。あるいは守備に意識を置くならをトイツ落とししておいて、その間のツモによって反撃できるかどうかを見るかもしれません。ですが、今回の戦術はあえて無筋の切りです。
この後何が起こるのでしょうか? 危険牌を切ったのを見て降りている対面と上家は、こちらも警戒します。2家に対して共通安牌を考えなくてはなりません。確実なのは今切られたです。ということで、降りている対面・上家からもが切られ、2枚壁→3枚壁→4枚壁という進化が期待できます。壁が厚くなるにつれ、外側のが放たれやすくなり…
ただその場合聴牌してもリーチは控えたほうがよいかもしれません。2枚壁の段階では当然警戒されますし、3枚壁・4枚壁となってもからを切ってのシャンポン待ちの可能性が消えていません。
そもそも七対子(チートイツ)が単騎待ちなので、追っかけリーチで勝負を挑むなら短期決着狙い。相手と自分と共通の安全(だと思われる)牌が待ちになっていて、降りた他家からの振り込みを狙うべきです。とするとの4枚壁が完成してもなお自分の方に疑念が残ってしまう待ちよりは、双方ともに安全そうな字牌を待ちに選ぶべきだと考えます。
つまり誰かのリーチ後にからという危険牌を切るという戦術はなくはないですが、その場合は黙聴にしておくほうが無難です。とすると点数的にどうなのでしょう。リスクとリターンはかみ合っているでしょうか。点数は関係なしで、絶対にあがらなくてはならない状況であれば、こういうやり方もなくはないかな、とは思いますが・・・ねぇ。
さらに言えば、「トイツ系牌効率」の趣旨から考えると、先制リーチされた場合は基本的に「オリ」です。オリながら危険牌を吸収して、あがれればラッキーという打法です。もろもろ踏まえると、狙って壁を作り出すというこの戦術(?)はおすすめできませんね。
まとめるとこうなります。
七対子(チートイツ)狙いのときにリーチされたら、素直にオリるなり、まわるなりしておこう。
序盤捨て牌の外側リーチ
リーチに対して筋や壁を頼りに粘るのと同じように、リーチ者の序盤捨て牌の外側も当たりづらいと考えられます。そこを逆手にとって、チートイツリーチの待ちに序盤捨て牌の外側を選ぶのはどうかというのが、今回の話です。
単騎でダマ聴にしていました。が3枚見えています。やや使いづらそうなですが、自信を持ってリーチに行けるほどではありません。そこにツモってきたです。
ここで待ち単騎リーチです。もちろん1巡目にを切っているので、その外側であるが盲点になって出和了しやすいと考えたからです。
なんと下家から一発で出てきて、満貫となりました。結果としてはうまくいきましたが、果たして本当にこれでよかったのか考えてみましょう。
まず河には私がを切っているのみで、他に萬子の情報はまったくありません。なのでは山に残っているかどうか不明です。実際は下家にトイツで持たれていました。
または端牌なので使いづらいですが、それでも単なる端牌にすぎません。今回でも下家が私のリーチを無視して進めるなら、切りでしょう。そしてそのまま両面を埋めていってとのシャンポンや、両面待ちで追いかけリーチなんて未来もあったかもしれません。
そしてが1巡目に切られているから、が待ちになることはあまりない、という考えですが、先切りが絶対にないということはありません。
「科学する麻雀」P199の各牌の危険度表によると、無筋1・9牌の危険度はEで「6.3」です。さらに「科学する麻雀」P201によると、序巡捨て牌の外側牌は通常よりも危険度が0.6倍に低下するとあります。
つまり今回のは、6.3×0.6=「3.78」で、単騎以外の字牌の危険度C「3.4」と同程度か、それよりやや危険です。筋1・9牌の危険度はB「2.9」なので、それより一段階は危険度は上がります。
ということで序盤捨て牌の外側は有用です。しかしそれが「1・9牌」であっても、一枚も切られていない字牌と同程度だということを覚えておきましょう。
ホンイツに見せかけた七対子(チートイツ)迷彩
さて出和了目的七対子の一番のネックは、捨て牌でばれやすいことでしょう。しかし、捨て牌で七対子とばれない方法が一つあります。実は私はこれが、出和了目的七対子迷彩の本命とにらんでいます。それはホンイツです。
七対子と捨て牌が似通っているのは、「チャンタ」「国士無双」もあります。しかし、そのどちらも待ち牌もまた七対子と似通っています。つまり「チャンタ」「国士無双」は、チートイツの迷彩になり得ないのです。
ところがホンイツです。この捨て牌は七対子と共通する部分があります。それは字牌の出が遅いということです。その他に関しては、ホンイツはある一種の牌だけがなかなか切られないという点のみ特徴があり、その他は割と自由です。これを七対子の迷彩として活かそうというわけです。
例えば、こんな配牌です。ドラはです。
ツモ
全然やる気が出ないですね。しいて言えば、白を重ねて123の三色からチャンタというところでしょうか。ソウズの一通もありますかね。全てを考えると切るのはです。
では次の巡です。をツモってきました。
ツモ
最初の構想が全て崩れるツモです。さぁどうしましょう。ツモ切るのも一つでしょう。でもこんなの和了れる気がしません。となれば七対子です。切りなんてどうでしょう。筋で切ることで、トイツ場を演出します。
では次の巡です。をツモってきました。
ツモ
ホンイツが濃くなってきたでしょうか。となるとを切っておきますか。あるいは三トイツですので、七対子に有用なは残してを切るなんてのもあるかもしれません。
ですがここはあえて切りも面白いです。その後は牌の重なり具合によって変わりますが、→と切っていき、最終で切りで、待ちとするのが理想形の一つです。
何をしているかというとピンズのホンイツを隠れ蓑にした、出和了を狙っているのです。ポイントはドラがということです。字牌とピンズを切らないことで、他家はピンズのホンイツを意識せざるを得ません。それによって他家の手牌進行を制限させることができます。
和了れなくてもいいんです。あからさまなドラ色のホンイツを見せることで、他家に制限させ、流局になればそれでいいという考えです。うまくいった場合は、字牌とピンズを防いでいますから、相対的に狙いの牌が出されることが多くなります。
ただ実際は思ったようにいくことは、ほとんどありません。ピンズのホンイツに見せかけようとしても、重なる牌がソウズばかりで、ピンズを切り出さなくてはならなくなり、ホンイツっぽさが薄れることもあります。
また最終的にどうしてもドラ待ちになってしまうこともあります。そうなった場合、ホンイツっぽさが仇となり、ダマにしたとしても出和了は期待できません。
さらに字牌待ちと、狙いの数牌待ちの選択になることもあります。自摸和了狙いなら字牌待ち。出和了狙いなら数牌待ちになるでしょう。ですが七対子は自摸和了が点数的に効率が良いです。そのため字牌と数牌の選択なら、字牌にするのが普通です。
字牌待ちはこれまで何度か語りましたが、自摸和了を目的とした待ちです。ですが、それと同時に出和了も保険としています。不要になりやすいので、他家から切られやすいからです。ですが、ホンイツを迷彩に使った場合、その出和了の保険が薄れます。
そういったデメリットがホンイツ迷彩の七対子にはあります。ですがそのデメリットは七対子バレバレの場合も同様ですから、ホンイツ迷彩はやるだけやってみる価値はあると思います。
まとめますと、
ホンイツ迷彩のポイントはドラです。ホンイツ迷彩を効果的に行うためには、先ほども述べましたが、ドラ色のホンイツに見せかけるのが有効です。それで考えると、手牌にドラ牌が1枚あるときは、そのドラ牌が待ち牌となる可能性がありますので、ホンイツ迷彩とは相性がよくありません。
またドラが字牌の場合も、ホンイツ迷彩の恩恵はあまりありません。ホンイツの注目が薄れることと、字牌の出が遅くなりがちなので、七対子自体の山読みがしにくくなるからです。
その辺がクリアできれば、ホンイツ迷彩はさほど無理なく行うことができるわりにメリットが大きいので、やってみて損はないのではないでしょうか。
リーチ宣言牌による七対子(チートイツ)迷彩
七対子が聴牌した場合、その捨て牌はどうしても怪しくなることが多いです。それをぼかすためにホンイツ迷彩をしようというのが前回の話でした。ただそれをするとある程度手組に制限がかかってしまいます。もっと簡単に出和了確率を上げる方法はないのでしょうか。
実はあります。それが今回紹介するリーチ宣言牌による迷彩です。
さて七対子については自摸和了が基本であることは以前述べました。そして自摸和了しやすい牌種についても考察しました。大まかに言うとこのようになります。
オタ風牌>役牌>1・9牌>2・8牌>3~7牌
もちろん巡目や場況、場に見えている枚数などによって変動はありますが、基本的に七対子の待ち牌は、上の基準に従って選択します。左に行けは行くほど場に切られやすい。つまり場に切られていないなら山にあるはずだと読めるからです。
しかしそれは他家も同じです。リーチがかかってその手が七対子だと読まれたら、上の基準で危険牌を判断します。つまりオタ風牌が最も危険で、3~7牌の方が安全であるという考えです。
だからといって安易に中張牌で待つと、山にあるかどうかわからないので、自摸れるかどうかわかりません。また他家の必要牌にもなりやすいので、他家から出和了できるとも限りません。そこで注目するのがリーチ宣言牌です。
次の状況を見てください。
さて、七対子を聴牌しました。ここはリーチで攻めたいです。かのどちらで待ちましょうか。は場に一枚切れの役牌です。先ほどの基準でいえば、上から二つ目ですから、なかなかいい待ちと言えます。
はその基準でいえば、上から三つ目です。悪くはありませんが、基準で判断すればよりは劣ります。
私の判断は……
待ちを選択しました。いくつか理由はあります。自分の捨て牌が七対子とは思われなくても、マンズに染めていると思われそうで、そのため他家が字牌を安易に切ってくれるかわからない。対面がマンズのホンイツ模様なので、は持たれておらず、を持たれているかもしれない。
そして最後の理由が今回のテーマです。つまり七対子を含め変則手と相手に考えられているなら、リーチ宣言牌がだとは盲点になるからです。
まずホンイツと思われるならマンズと字牌が警戒されます。そして七対子と思われるなら、先ほどの基準により、一枚切れのより危険な牌としてオタ風牌が考えられ、その基準より下の1・9牌に目がいかなくなります。
結果は下家からロンすることができました。実際は、は山に2枚ありましたし、さらには下家にトイツで持たれていましたので、この選択でよかったのかどうかは分かりませんが……(対面から通されたは暗刻から切られたものでした)
まぁ、とりあえず言いたいことは、七対子バレバレの捨て牌で、リーチ宣言牌より、一つ基準を落とした待ちは、出和了目的リーチとしては有効ではないかということです。ただし基本は自摸和了なので、場況が普通なら、基準通りで待つべきなのではないかとも思います。
1枚切れオタ風牌より、1枚切れ役牌でリーチ
1枚切れの字牌は、ツモ和了、出和了ともに期待できる優秀な待ちです。よって即リーチと行きたいところです。それを前提としたうえで、聴牌時に1枚切れの役牌と、1枚切れのオタ風牌があったとします。さてどちらの待ちでリーチと行くべきでしょうか。
普通に考えれば、役牌はそれで振り込むと、1翻アップの可能性があります。そのため警戒されやすいです。オタ風牌ならそれ単独では役になりません。その意味では警戒されにくいです。それならより警戒されにくいオタ風牌で待ちたいところです。ですがことはそれほど単純には行きません。それは相手の立場に立って考えるとわかります。
まず自分の捨て牌が怪しい場合です。チートイツを疑われるような捨て牌になっているなら、役牌が宣言牌でのリーチなら、それよりも優秀な待ち牌としてオタ風牌が容易に想定できます。すると最初の目論見とは逆に、出和了の期待値を下げていることになります。本末転倒です。
前章で述べたように、チートイツを疑われる捨て牌だからこそ、あえてオタ風牌がリーチ宣言牌の役牌待ちが盲点となり、有効かもしれません。(今回の捨て牌は、チートイツっぽいとは言えませんが…)
そしてもう一つのポイントは、1枚切れという点です。オタ風牌のトイツがあったとして、それが場に切られても、役にはならないので鳴かない選択は普通です。結果として面前で聴牌して、そのオタ風牌と何かのシャンポン待ちになることはよくあります。
それに対して役牌のトイツがあれば、それが場に切られれば役になりますので、オタ風牌と比べて鳴くことが相対的に多いです。すなわちリーチがあった際、役牌は1枚切られていれば、生牌と比べてかなり切られやすくなるのです。
今回の比較は1枚切れのオタ風牌と、1枚切れ役牌です。すると振り込んだときに1翻アップしてしまう可能性を含めても、出和了のしやすさはいい勝負になりそうです。そして役牌での出和了のしやすさは、リーチと場に切られた役牌との距離が近ければ近いほど効果が高まります。
私は自風牌のを切って、オタ風牌の待ちでのリーチを選択してしまいました。しかし対面が3巡前にを切っていることを考えると、自風牌の待ちの方がかなり優位であったように思います。
結果的にはは上家がトイツで持っていました。リーチの現物としてトイツ落としされましたが、切りリーチの場合どうなっていたかはわかりません。ただ降りようとしても、手牌の格好を維持しようとしても、は打たれやすい牌だったとは思います。
結局ツモることができましたので、まぁ、どちらも優秀な待ちだったということでしょう。ですが、役牌の方こそ出和了しやすい場面がある、という視点は持っておくべきと思います。特に今回は赤牌が1枚手の中にありますので、ツモ和了にこだわる必要がないというのも大きいです。
禁忌の技、オタ風牌ドラ単騎リーチ
いかにも捨て牌が七対子くさいリーチとくれば、1・9、字牌が疑われます。それと同時に、七対子の待ちとくれば、ドラも疑われるところです。
ドラは軽く切って鳴かれたくはありません。なので、手の内に残されやすいです。そしてドラが待ちになれば、仮に他家から追いかけられても、ドラでロンされることはありません。最悪の事態だけは避けられます。
その意味で七対子っぽいリーチには、ドラが切られることはそうそうありません。ですが、七対子ドラタンキリーチをする人にとっては、その状況は織り込み済みです。むしろ出和了ではなく、ツモ和了を狙っています。
七対子の場合リーチしてドラをツモれば、それでハネマンですから、点数的にはとても効率がいいです。どうしても点数が欲しい人にとっては、狙い役の一つです。
さてそこで、オタ風牌のドラ単騎リーチです。基本的にはこれも同じです。南3局とかオーラスとかで、大きく点棒を減らされているなら、ドラ単騎はリーチです。無理は承知で、わずかな可能性にかけます。ダメでもともと、当たればラッキーという感じです。
逆に言えば「七対子のオタ風牌のドラ単騎リーチ」なんて、オタ風牌自体警戒されますし、それに輪をかけてドラで警戒されます。とても出和了なんてできそうにありません。そう考えるのが普通だと思います。
ですが、例えば東1局や東2局といった、まだまだこれからの状況ならどうでしょうか。リーチがかかっていない場なら、オタ風牌のドラは、手牌が整った人からは割と簡単に打ち出されます。一枚では使えない牌ですし、それが役牌になるのは一人ですから、鳴かれる危険性もそれほど高くはありません。
ならば普通七対子ドラタンキは、ダマ聴にします。そしてそのこぼれるドラ牌を、こっそり待つのが基本でしょう。七対子ドラドラは、子で6400点、親なら9600点です。そこそこの点数です。これを逃すのはさすがに惜しい。
ということでまだまだこれからの状況では、オタ風牌のドラタンキはダマが基本です。これが大前提です。
しかしだからこそ逆に、リーチという手もありなのではないでしょうか。上記のことは、他家もそう考えます。「オタ風牌のドラ単騎なら、リーチしないのではないか。こっそり和了るため、普通はダマ聴にするだろう」これは、論理的な考えです。それを逆手に取るわけです。
前章でも紹介しましたが、「カイジ」の「17歩編」で、このようなシーンがあります。
本当はですね 三好…手牌選択のとき…この牌…こので待つこともできた…つまり…この形の単騎待ちもできた これで待てば…裏ドラなど関係なく倍満手っ…! しかし…ククク…! 切ってくれんでしょ さすがにこのは…! ねぇ…! ククク…クク…ククク…
そりゃあ…切らねぇ…! 打てる牌じゃねえっ…! しかし…ギリギリの状況になったら…逆に…通る牌か…? この手の…単騎は…! 超危険牌ゆえ…! 逆にセーフ…! ここ一番じゃ セーフ…! 待つ牌じゃない…!
それを踏まえて(?)オタ風牌ドラ単騎リーチの実戦譜です。
ということで、オタ風牌ドラ単騎リーチです。点数がちょっと…アレですし、生牌なのでシャンポン待ちの可能性も十分残ってしまいますが、その他はまぁだいたい条件通りです。他家からどう見えるのでしょうか。
情報が少なく、何かよくわからないリーチ。とりあえず一枚切れの「東」タンキよりも良い待ちだろう、ということくらいでしょうか。捨て牌からは七対子は分かりづらいです。オタ風牌ドラタンキリーチは、むしろ七対子っぽい捨て牌の方が効果的です。
そこへ持ってきたオタ風牌の「北」。もちろん危険牌の一つです。ですが、「オタ風牌のドラ単騎なら、リーチしないのではないか。こっそり和了るため、普通はダマ聴にするだろう」という、考えがあります。
そこで手がそれなりならば、あえて「リーチがかかったからこそ、そこに対してドラを切る」という考えに至るのです。そしてそれを逆手に取った「オタ風牌ドラタンキリーチ」という禁忌の迷彩に至るのです。裏の裏は表。1枚切れのオタ風ドラ牌なら、なおありでしょうか。
字牌地獄待ち単騎リーチ
何度も語られているように、一枚切れの字牌単騎はツモりやすいです。特に捨て牌三段目にはツモの確率が5%を超えるものも出てきます。ではそれに対して二枚切れの字牌、つまり地獄単騎待ちはどうでしょうか。
実は地獄待ち単騎は、一枚切れはもちろん、生牌よりもツモれる確率は低いです。そのため七対子の待ちについては、「七対子は一枚切れ字牌で待て」という格言めいたものにまでなっています。そして地獄待ちは避けられる傾向にあります。
では、出和了を含めて考えればどうでしょうか。七対子の出和了は、得点的に効率が悪いです。そのためツモアガリを狙うのが基本です。しかし手牌に赤牌が一枚含まれていれば、話は別です。その赤牌がツモの代わりと考えると、出和了でも得点効率が良くなります。つまり手牌に赤牌が一枚含まれていれば、ツモアガリにこだわる必要がないのです。
そこで字牌地獄待ち単騎リーチです。場にすでに二枚切られている字牌は、他家から見るとシャンポン待ちの可能性がありません。つまり単騎待ちにしかあたり得ないのです。捨て牌が普通であればもちろん、七対子っぽかったとしても、まさかそこで待つことはないだろうと考えるのが普通です。
実戦譜から考察してみましょう。
2023年10月31日 Mリーグ、第二戦南四局一本場。ドラ
東家 小林剛 44900
南家 瀬戸熊直樹 21500
西家 二階堂瑠美 8400
北家 渡辺太 25200
南家の瀬戸熊選手は、2枚切れの単騎、つまり地獄待ちでリーチに踏み切りました。
この時点で山は残り56枚あります。ですが王牌が14枚ありますので、ツモ山牌は42枚です。そしてドラ表示牌はではありませんから、このがツモ山牌の中にある確率は1-{(14-1)÷56}=0.767…77%です。
4回中3回はツモ山にあると考えれば、大丈夫のような気もしますが、4回中1回は王牌にあると考えるとやや心もとない感じもする、微妙な数字です。ただそれよりも心配なのは、その牌がツモ山牌のどこに積まれているかです。
浅い位置に積まれていればいいのですが、山深くに積まれているかもしれません。攻め返してくる人がいる状況なら、それは王牌に埋もれているのと同様です。無防備な状態で戦うことになります。
計算すると今回の状況では、が6巡以内に自分を含め誰かのツモ牌になる確率が50%を超えます。地獄待ち牌なのですぐ切られるとして、2回に1回は6巡以内に和了れるということです。もちろん終盤になればなるほど、牌山か少なくなり濃度が高くなります。ちなみに15巡目、16巡目なら、3巡以内に誰かのツモ牌になる確率が50%を超えます。
そしてもちろん字牌の地獄待ちは、河に切られやすいです。ですが、完全に降りている人から切られるのは、もちろんまずは現物牌からです。そうすると、字牌の地獄待ち牌の出が遅れることもあります。であれば、この6巡という数字もやや甘い見積もりかもしれません。
そしてその隙をついて、他家からの反撃があると、地獄待ちをしている側からするとどうしようもありません。なすがままです。つまり全員が和了トップのような状況では、有効ではないでしょう。
今回の状況ではどうでしょうか。オーラスということで、それぞれに条件があります。
東家の小林剛選手は、満貫までは振っても大丈夫です。とはいえ、赤ありの麻雀ならハネマンの可能性もあります。無理する状況ではありません。このリーチを受けて降りるでしょう。
西家の二階堂瑠美選手はラス目ですし、リーチ棒が出たことにより、満貫ツモで着順が上がります。がむしゃらに向かってくることも考えられます。ですが捨て牌から見ると、中張牌が一枚切られたところで、そこまで手が整っているとも思えません。なら無駄な失点をしないよう、おとなしく降りることもあるかもしれません。
北家の渡辺太選手ははすでに2副露しており、一番前に出てくる可能性が高いです。とはいえ、リーチ棒が出たことにより、聴牌ノー聴で着順が変わることがなくなりました。降りれそうならそうする可能性もあります。
次に、見えている字牌の数を確認しましょう。
1枚、2枚、2枚、3枚、2枚、2枚、4枚。ということでよさげな字牌はしかありません。数牌はといえば、ソウズがやや良さげな感じがしますが、実際この捨て牌で切りリーチで待ちだと、ホンイツも疑われますので、それもどうかと思います。その他の数牌は良くわかりません。有効な手替わり牌が今のところありません。
点数的には、ダマでも出和了で6400+300点あり、2着にはなれます。トップとは23400点差。これは倍満ツモかハネマン直撃で変わる点差です。裏ドラ次第ですが、リーチをすればその可能性が出ます。
Mリーグはトップがえらいルールです。リーチ棒を出すことで、瑠美に満貫条件を作ってしまうことはマイナスですが、トップの可能性が出ることと、オリ打ちが期待できるとなれば、ここは地獄待ち単騎もやむなしというところでしょうか。決して自信満々のリーチではないはずです。
これが赤牌が一枚でもあれば話は別です。そうであれば、トップから直撃の時点で逆転です。自信満々でのリーチになったのではないかと思います。(いや、しらんけどな)
字牌地獄待ち単騎リーチの条件
字牌地獄待ち単騎リーチが有効な条件をまとめてみましょう。
- 相手がオリる可能性が高い
- 良い待ち牌候補が少ない
- 赤牌が1枚手にある
- 捨て牌三段目(勝負が長引きづらい)
これらの条件が重なるほど、字牌地獄待ち単騎リーチが有効になるかと思います。もちろん得点状況にもよるでしょうけれどね。
では字牌地獄待ち単騎リーチの実戦譜です。
前巡単騎でチートイツを聴牌していましたが、ダマ聴にしていました。ドラドラありますから、出て6400点。とりあえずラスは抜けられます。
そこにを引いてきました。自分から3枚見えのいわゆる地獄待ちです。待ちを変えるのは変えるとして、リーチをするかどうかです。
上記の条件で考えると、「良い待ち候補が少ない」と「捨て牌三段目」は当てはまっています。あとはラス目のリーチなので、他家からすると押しづらいのはあるかもしれません。
私の選択は、いったんダマ聴です。
そしてここであらためてリーチです。なぜこの巡目なのかと言うと、先ほどの条件の「赤牌1枚」の帰りに、「海底」と「一発」を求めたのです。
仮に海底でツモれば、「リーチ一発海底ツモチートイドラドラ」で倍満です。
結果は上家からロンです。これでも「リーチ一発チートイドラドラ」で丁度跳満です。
上家は聴牌しており、聴牌維持のためツモ切りでした。だから降りて打ったわけではありませんでした。つまり地獄待ちというのは、降りていようが攻めていようがどちらにしても出る待ちなのでしょう。
すると終盤に限っていえば、攻めている人が多い方が逆に和了りやすいとも言えそうです。なんかよくわからなくなってきました。
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